A.環境・アメニティインフラ技術
A1 薄層屋上緑化システムの開発と適用   (株)竹中工務店  三輪 隆
 植栽基盤を薄いマット層にすることで積載荷重を軽減し、建物に負担をかけない薄層屋上緑化システムを開発し、プロジェクトに適用した。
薄い土壌でも生育可能で強健でメンテの手間がかからない多肉植物のセダム類を使用することで、植栽基盤の薄層化、システム全体の軽量化、ローメンテナンス化が可能になった。屋上緑化による都市のヒートアイランド化防止を図るためには、屋上面積の大半を緑化することが望ましいが、在来工法では積載荷重の制約により、屋上面積のうち緑化できる面積の割合に制約があった。本システムの荷重は湿潤時で40kg/u以下と、屋上緑化によく利用される芝と比べ約3分の1以下になり、新築建物だけでなく既存建物の屋上を、荷重制限を意識することなく全面積にわたって緑化することも可能となった。また、夏期の温度計測等により、屋上表面温度の低下効果を確認した。

A2 油汚染土壌の洗浄処理と生物処理実験例   (株)熊谷組  土路生 修三
 工場移転や土地の転売・再開発に伴い重油や石油等の油による土壌汚染問題が顕在化している。
 油汚染土壌の処理方法としては、土壌置換法や埋立処理、焼却処理、土壌洗浄処理が行われている。
 近年では、欧米を中心に安価な処理方法として微生物の浄化能力を活用した「バイオレメディエーション法」が実用化されており、国内においても注目されている。
 本報告では、従来微生物処理のみでは困難とされてきた高濃度重油汚染土壌を対象に、当社で開発した磨砕処理による土壌洗浄技術と生物処理を組み合わせた浄化実験について結果を述べる。
 なお、磨砕処理による土壌洗浄の特長としては、薬剤や洗剤等を使用せず水のみで処理を行うことで、土壌中の微生物に悪い影響を与えない利点を有する。

A3 都市化や土地開発による鳥類の変化   大成建設(株)  青島 正和
 環境アセスメントでは事業により逃避する鳥類の推定を行うが、ほとんどが環境変化に生息条件が合うか合わせないかを人間の経験と勘で判定していた。
 本論文は最初森林に生息する鳥には生息する順番が2通りあることを示した。
 一つは生息森林の多さからみた順位で、他の一つは個体数の多さから見た順位である、順位の平均的標準偏差は4位であった。
 2番目に都市化による逃避する鳥と出現する鳥の規則性を調べた。逃避・出現とも生息順位の低い方から始まると考えられる。3番目に土地開発(ゴルフ場建設)により逃避する鳥と出現する鳥の規則性を調べた。
 都市化の場合と同様、生息順位の低い方から逃避・出現が始まる。
 これらの結果を用いれば、環境アセスメントにおける生態系の解析および生息鳥類の変化の論理的・客観的予測に使用できると考えられる。

A4 都市のヒートアイランド対策技術の開発   (株)大林組  小宮 英孝
 都市においては、コンクリート建築物、アスファルト道路に代表される人工物や人工廃熱によって、ヒートアイランド現象や砂漠化がおきていると指摘されているように、熱環境が悪化の一途をたどっていることはよく知られている。
 しかし、熱環境からみて適切な開発計画を立案すれば、上昇傾向にある夏季日中の平均気温を1℃以上、局所的には2〜3℃低減できることが、明らかになりつつある。
 この観点から、地域熱環境を改善できるハード技術、並びにその適用効果を予測できるソフト技術が必要であると考え、技術開発を行ってきた。ここでは、そのなかで代表的でオリジナルな開発技術である「屋上緑化システム」「打ち水ペーブ」並びに「熱環境予測システム」を中心に報告する。

A5 五感で感じる空間づくりにおける景観設計   (株)熊谷組  保津 千寿
 ノーマライゼーションの理念の社会への浸透から、パブリックスペースにおいて、スロープや誘導ブロック等の、人が最低限の目的を果たす為の整備に加え、肉体的、精神的条件に関わらず、誰もが共有できる居心地の良さや、そこにしか無い特有の雰囲気といったものが求められるつつある。
 これは空間において、特定の行動や物を得るという利便性以上に、心の豊かさを満足させる要素が在るかどうかということが問われていると考える。
 そこで、人の感受性の基本となる五感を媒体とし、人がそこにいることで何らかの刺激を享受できる、心で感じる空間づくりを景観設計という視点から考える。
 環境情報獲得の多くを担う、五感の中の視覚に着目し、特にその中で人の心理面に訴える処の多い色彩という視点から最近の街づくりの事例を分析し、色彩構成の規則性や、それによって生じるイメージとの関連性について比較、検討を行う。

A6 昇降式養生システムによる高層ビル解体工法の開発   西松建設(株)  宮下 剛士
 ビル解体の一般的な工法は、外部養生足場を建物全面に架設し、大型解体重機で最上階から建物を破砕しながら下りてくる工法であるが、高層ビルの解体工事においては、騒音・振動といった周辺環境への配慮や第三者ならびに作業員の安全確保のほか、近年では、解体廃棄物の適正処理、リサイクル等が課題となる。
 今回、都心に建つ高層ビル(地上19階、塔屋2階)の解体工事を施工するに当たり、上記の課題の解決を図るために、「MOVEHAT解体工法」を開発し適用した。
 本解体工法は、建物躯体をブロック状に切断解体する「部材 解体工法」を基本とし、解体作業に必要となる範囲の養生フレームを昇降式にして、最上階 より解体工事の進捗とともに1フロアづつ下降させていく工法である。本報では、解体工法の概要および施工結果について概要を報告する。

A7 GISを利用した緑地評価システムの開発   鹿島建設(株)  山田 順之
 劣悪な都市環境を改善するために、緑地の保有する公害軽減機能や気象緩和機能が注目されている。
 これらの機能を定量的に評価できれば、緑の基本計画や環境保全計画など環境関連の各種計画策定の際に重要な基礎資料となる。
 そこで、本研究では、国土数値情報や各種統計資料等の既存のデジタルデータ及び汎用型のパソコンを利用して、コンピュータの専門家以外でも操作できる実用的な緑地環境評価システムを開発するとともに、静岡県掛川市においてシステムを適用し、市内の各種緑地が保有するの気象緩和機能、大気浄化機能、二酸化炭素固定化機能、生命基盤維持機能を解析・評価した。
 この結果は、各種計画策定業務に活用でき、さらに、専門知識を有さない住民が、地域環境に関する理解を深める基礎資料として利用できることを示すことができた。
 なお、本研究は平成12年度GIS整備普及支援モデル事業「実証実験データベース利活用実験」において実施したものである。

A8 都市公団における屋上緑化技術開発と展開   都市基盤整備公団  山内 幸
 劣悪な都市環境を改善するために、緑地の保有する公害軽減機能や気象緩和機能が注目されている。
これらの機能を定量的に評価できれば、緑の基本計画や環境保全計画など環境関連の各種計画策定の際に重要な基礎資料となる。
 そこで、本研究では、国土数値情報や各種統計資料等の既存のデジタルデータ及び汎用型のパソコンを利用して、コンピュータの専門家以外でも操作できる実用的な緑地環境評価システムを開発するとともに、静岡県掛川市においてシステムを適用し、市内の各種緑地が保有するの気象緩和機能、大気浄化機能、二酸化炭素固定化機能、生命基盤維持機能を解析・評価した。

B.都市構想の計画・事例
B1 居住者への意識調査に基づく都市居住環境再生に関する提案   清水建設(株)  高瀬 大樹
 都市居住環境の問題点やその望ましい姿を明らかにし、居住者の生活を中心に考えた街づくり実現のための指針を得ることを目的とし、首都圏都市居住者を対象に居住意識に関するアンケート調査を行った。
 調査結果からは、居住者同士のコミュニケーションの場や機会不足、愛着を感じるような街の魅力不足、車中心の街づくりによる生活のしにくさなどの問題点が明らかになった。
 一方、ライフスタイルに応じた居住地域の住み分けがされていることも示唆され、画一的でない地域の特性を活かした街づくりの重要性も明らかになった。
 望ましい都市居住環境の姿である「多様な世代が定住できる街」の実現のために、新しい都市型コミュニティのあり方や、歩行者を中心とした、車に依存しない街づくりの手法と同時に、その街の個性として評価する点や改善すべき点を客観的に評価する手法が必要であることが分かった。

B2 星川・天王町地区の街づくりと連続立体交差事業   横浜市  永瀬 一典
 星川・天王町地区は、横浜駅を中心とする都心部に隣接した地域拠点で、区役所・消防本部・警察署・公会堂・図書館などが立地する区の行政機能の集中地区である。
 近年では大規模工場の移転により土地利用転換が顕著となり、横浜ビジネスパークを代表とする業務市街地への整備が進められている。
 一方、地区中央部を東西に横断する相模鉄道本線と帷子川は、地域の南北を分断しており、さらに、駅へのアクセス道路等の都市基盤施設が脆弱であり交通環境が未整備である。
 ここでは、当地区の持つ歴史的背景から誘導型土地利用転換が図られた街づくりと地域住民の念願であった鉄道の連続立体交差事業による踏切の解消に伴う地域交通の円滑化とまちの一体化、さらに、交通結節点としての交通基盤整備について紹介する。

B3 一級河川井関川放水路改修事業   都市基盤整備公団  村井 剛
 関西文化学術研究都市建設に合わせて施工された井関川放水路事業は、その計画により開発による雨水流出増に対応することはもとより、改修困難な天井川区間への流入をカットすることで治水向上に大きな役割を果たし、さらには歴史的な問題をも解消することとなった。
 ただカットするだけでなく、分流工を設けることにより下流に対する環境等維持用水にも対応している。
 また、土地区画整理事業の緑化計画と一体的な整備をすることで、治水機能のみにとらわれない形で、住民の憩いの場や住民の交流の場といった水辺空間の創造を実現した。

B4 実施例からみた大規模商業施設における交通特性に関する考察   大成建設(株)  西本 好男
 住環境の保持を目的とした大規模小売店舗立地法が平成12年6月より施行され、大規模商業施設開発を行う場合、この大規模商業施設開発に伴って発生する交通の周辺への影響を予測、評価するとともに、混雑回避のための適切な処置を行い周辺環境に考慮した交通計画の重要性は増してきた。
 しかしながら、現実的には計画初期段階において、開発者側に交通需要予測に有効な手段が無いのが通常で施設の開発交通量を予測するには単位床面積当りの発生集中交通原単位を用いること(いわゆる原単位法)が一般的といえる。
 本論では平成12年に完成した大規模店舗3店舗を調査したのでその調査結果と2店舗については、開発交通量を原単位法ではなく、商圏を設定し年間売上、営業日数、休日売上指数、客単価、買い上げ率等を総合的に考慮して算定したのでその予測値との比較を報告する。
 また原単位法の一つの方法として広く使われている、大規模小売店舗立地法による数値との比較も行ってみた。

B5 インターネットを利用した住まい手参加型の街づくり   都市基盤整備公団  関根 宣由
 都市公団千葉地域支社「おゆみ野地区」(千葉市緑区)では、多様化する生活スタイルによる多種多様なニーズへの対応と地域コミュニティーの育成を目標に「住まい手の理想の街づくり」を目指し、1999年、同地区に「モデル街区プロジェクト」を実施した。モデル街区では月1回(全5回)の住まい手によるワークショップを現地で行い、道路や公園等の計画やコミュニティーのルールづくり等が議論され、実施した。
 モデル街区プロジェクトの経験からワークショップ参加者への負担を減らすこと、また、随時参加できるシステムの構築が急務となり、結果として、インターネットを利用した住まい手参加型の街づくりに至った。
 本システムはバーチャルな会議室内で自由な意見、情報を交換し、趣味や共通の価値観を持つ方々がグループを結成し、その方々が一緒に街を計画しつくり住まう全く新しい参加型の街づくりシステムである。

B6 東京都市圏の望ましい総合都市交通体系のあり方 交通新世紀〜パッケージ型戦略〜
   国土交通省関東地方整備局  三浦 良平
 国土交通省及び東京都市圏の1都4県3政令市と3公団で構成される東京都市圏交通計画協議会は、平成10年度に実施した実態調査(パーソントリップ調査)の結果に基づき、今後の交通ニーズ、社会経済情勢の変化に対応した21世紀の総合都市交通体系を検討してきた。
 本稿は、その検討結果を協議会としてとりまとめた「東京都市圏の望ましい総合都市交通体系のあり方」に関する報告である。
 本稿では、検討過程で実施したシミュレーションによる試算結果を紹介するとともに、協議会が考える東京都市圏の基本目標を達成するために必要となる施策群を提案する。

B7 東京都における臨海部開発について   東京都  柳 修
 1.東京都は、(a)多心型都市構造への転換 (b)国際化、情報化の進展に対応 (c)多様な機能を備えた都市形成 など3つ開発目標に基づき、臨海を第7番目の副都心として育成する方針を固めた。
 2.臨海部開発に伴い整備される広域的根幹施設(都市計画道路4路線等)は、臨海部開発のみならず、首都圏交通ネットワークの形成など広域的な役割を担う一方、民間開発にとっても多大な開発利益が見込まれることから、公共負担と併せて民間開発利益の還元としての開発者負担により整備する。
 3.築地市場の豊洲移転計画、有明の丘防災公園都市再生プロジェクトへの位置づけ等 臨海部を取り巻く新たな計画に対応した着実な整備に向け、都は、国に対し無利子貸 付制度の創設を求めるなど、新たな財源確保の方策も提案している。

B8 竜ヶ崎ニュータウン龍ヶ岡地区における新しい郊外居住の試み   清水建設(株)  高瀬 大樹
 都市基盤整備公団では、茨城県龍ヶ崎市にある竜ヶ崎ニュータウン龍ケ岡地区において、豊かな価値観とライフスタイルにこだわり、積極的に郊外生活を楽しむことができる新しいタイプの住宅地“新世紀邑”を提供している。
 新世紀邑は、すでに初期整備エリアで事業化しているが、今後の本格展開に向け、よりよい街づくりを目指すため、居住者へのアンケート調査によりプロジェクトの再評価を行なった。
 その結果、新世紀邑は、自然環境やコミュニティ形成については概ね良好であるが、生活利便性については若干の不備があることが判明した。
 また、アンケートによれば、住民は、自然環境・景観・通常の医療機関・公共交通機関といった項目に特に関心を持っており、これらについては今後もまちづくりにおけるベーシックな要素としてきちんと整備する必要がある。
 逆に、住民は、コミュニティ形成やライフスタイルといったソフトな項目には開発者の期待通りには関心を示しておらず、これらについてはまちづくりにおいて重要な考え方ではあるが、付加価値的な項目といえる。
 最近は一般的に都心居住志向が強いが、上記のようなベーシックな機能を踏まえつつ、街の付加価値として有効なソフト的な仕掛けを行うことにより、より魅力あるまちづくりを行っていくことが、今後の郊外居住に対応するまちづくりにおいて必要であると考える。

C.物流・交通・情報通信インフラ技術
C1 沿道再開発と協調した横断歩道橋の建設事例  東急建設(株)  玉井 真一
 (仮称)渋谷歩道橋は国道246号線と首都高速3号線を同時に1スパンでまたぐ横断歩道橋である。
建設地では歩道下に共同溝が埋設されているため歩道橋橋脚や地下横断歩道の設置が困難であったが、歩道橋を沿道の再開発ビル公開空地2階に接続し、昇降設備を共用することで横断歩道橋の設置が可能となった。
また、本歩道橋は自動車の視点から首都入口のランドマーク性と住民や歩行者の視点から都市環境への調和の両立を目指して慎重な意匠設計を行った。
さらに、エレベータを設置してバリアフリーな歩道橋とした。本文は、この横断歩道橋の建設について報告するものである。

C2 交通シミュレーションモデルを適用した交通施策評価について   (株)熊谷組  花房 比佐友
 近年、TDMなどの交通施策やITSの評価ツールとして交通シミュレーションモデルの適用性が認識されつつあり、その需要はますます高まっている。
 その理由として、複雑な交通現象を再現できること、交差点単体はもちろん道路ネットワークを対象とした施策の動的な評価が可能なこと、面的な評価が可能なこと、などがあげられる。
 しかしながら、交通シミュレーションモデルを適用していく上での問題点もあり、データ収集や再現性の検証など、実際の業務を行っていく上での留意点や対処方法を整理しておく必要がある。
 本稿では、交通シミュレーションを適用した実際の業務をもとに、シミュレーションを行っていく過程での留意点および問題点を議論していく。

C3 トンネル技術の専用ポータブルサイト構築し、施工へITの適用と展開   清水建設(株)  宇野 昌利
 トンネル技術者の業務の効率化を目指して、イントラネット上にトンネル技術者専門のポータルサイト「トンネルサイト」を構築し、全国各地で施工中の約40箇所のトンネル工事作業所や本社や支店のトンネル関連部署の間で運用を行っている。
 作業所および本支店の技術者は、過去60年間、約12,000件におよぶ技術情報データベースから必要な情報を参照したり、全国の作業所の施工状況をリアルタイムに把握したり、掲示板により、技術的な問題を全国の技術者に相談し、解決策を得ることができる。
 今後、運用がすすむにつれてナレッジが蓄積され、蓄積された「トンネルナレッジ」により、技術の伝承やさらなる業務の効率化に役立つと期待されている。

C4 都市交通課題へのITS導入に向けた検討事例   日本電気(株)  木村 聡
 ITS(Intelligent Transport Systems)は、都市交通課題に対する解決策の一つとして、また都市活動の活性化を担うものとして、わが国だけでなく世界的な期待として検討が進められている。
 しかし、ITSを取り巻く現状を概観すれば、大きな期待がもたれる反面、特に街づくりの現場では具体的な導入の手順がわかりにくいといった課題がある。
 上記の課題に対し、ITSの具体的な適用方策を見いだし、街づくりを支援することを目的として、都市交通課題へのITSいわゆる「都市ITS」の導入に向けた検討を行った。
 本論文では、都市ITS導入の考え方、ITS導入のステップを提案する。併せて、モデル都市に対する検討事例として、都市交通の現状と課題分析、都市ITSの導入システム例及び想定される導入効果の検証結果について報告する。

C5 名古屋ガイドウェイバスシステム志段味線の整備について   名古屋市  前田 健
 ガイドウェイバスシステムは、鉄軌道系の公共交通機関を導入するほどの需要は見込めないが、従来のバスでは対応が困難と考えられる地区に導入するのに最適な経済システムであると同時に、デュアルモードの導入により、渋滞区間は専用軌道走行による定時性の確保ができ、平面区間は従来のバスと同様に、きめ細かい面的サービスができる新しい交通システムである。
 名古屋市の北東部から都心方面へ向かう道路交通の混雑を緩和するとともに、本市北東部の志段味地区開発により新たに発生する交通事情に対応することを目的とし、日本初の公共交通システムとして、ガイドウェイバスシステム志段味線を整備したものである。

C6 市民意識調査に基づいたLRT導入に関する基礎的検討〜前橋市の事例   国立群馬工業高等専門学校  田尻 要
 近年、地方都市圏における交通問題の解決と中心市街地の活性化を目的として、LRT(Light Rail Transit)の導入が注目されているが、LRTの導入と事業化によって期待される効果を実現するためには、最終的なサービス受益者(利用者)である市民のコンセンサスの形成を目的として、地域特性や都市交通に対する市民意識を抽出することが重要な課題のひとつであると考えられる。
 そこで本報では、北関東の中心的な地方都市である前橋市を事例に、中心市街地の活性化と交通政策の見地から、LRT導入に関する市民意識についてアンケート調査を実施した結果の概要を報告する。
 調査の結果、市街地区域に居住するアンケート回答者の中心市街地への来訪に関する行動特性と、LRTに期待する基礎的な運行条件や導入に対する影響への意識などが明らかになった。

C7 物流拠点ネットワークの策定と輸配送シミュレーション技術   大成建設(株)  栗山 聡
 企業にとって、物流拠点の数や立地を決定することは、投資コスト及びその後に発生する物流コストを考えると、重要な意思決定事項となる。この判断を誤り、多額の物流コストを支払ってきた、もしくは多額の初期投資をかけたにもかかわらず稼働率の低い物流拠点を抱えてしまったという企業も少なくない。
 そこで本文では、納品サービス対応、輸配送手段、配送効率等を考慮に入れた上で効果的な物流拠点ネットワークを策定するための基本手順を説明する。
 併せて、物流拠点ネットワークの策定には不可欠な輸配送シミュレーション技術について紹介する。

C8 都市居住における乗用車の保有と利用のあり方に関する調査研究   都市基盤整備公団  山端 一浩
 都心部は、郊外部と比較して、公共交通機関や各種施設がきめ細かく整備されていることにより、環境問題や交通渋滞問題等に対応するため、乗用車への依存度の低いライフスタイルが可能となる。
 一方、高容積の開発が求められることから、駐車場を確保するための整備コストが高くなるという課題がある。
 本調査では、東雲地区を例とし、都心居住者へのアンケート調査をもとに多様な交通面のサービスを検討するとともに、これにより稼働率の低下した自家用車の保有を減らし、駐車場設置率を低減する方策を検討した。さらに、交通事業者へのヒアリング調査により、東雲地区で求められる新しい交通事業システムの可能性を探った。

D.供給・処理・エネルギーインフラ技術
D1 ビル省エネルギー技術の展開   (株)東芝  高木 康夫
 電力市場の自由化により省エネルギー・省コストに対する工夫の余地が大きくなってきたこと、および、CO2排出量の削減要請の高まりによって、需要家側での省エネルギー技術が重要視されるようになってきた。
 需要家側、特にビルの省エネルギーでは、エネルギー消費の50%を占める空調系の省エネルギーが特に重要である。
 この代表的な技術として補機動力の低減を狙った冷却塔と吸収式冷凍器の協調運転、および、搬送動力の削減を図るため冷温水ポンプと空調ファンのインバータ化や、大温度差空調の実現が報告されている。
 本稿では、これらの省エネルギー技術を事前に正確に評価し、実際のビル空調に役立てるために、ビル動特性シミュレータHVACSIM+(J)による評価を実施した。
 また、冷温水ファンと空調ファンを同時にインバータ化したときの最適協調運転を実現するために、モデル予測制御技術を応用した新空調制御方式を提案する。

D2 下水道施設の補修に適した耐硫酸抗菌モルタルの開発   (株)熊谷組  小山 秀紀
 下水道施設のストック量は急速に増大しており、早くから整備が始まった大都市を中心として、施設の老朽化が急速に進行することが予測されている。
 下水道施設におけるコンクリートの劣化は微生物の作用により生成される硫酸に起因している。
 筆者らは耐硫酸性を向上させるモルタル配合、劣化の原因である微生物の
 繁殖を抑制する抗菌剤の開発に取り組み、下水道施設の断面修復モルタルとして耐硫酸抗菌モルタルを開発した。
 本論文は、これまでの研究成果と開発した耐硫酸抗菌モルタルの適用例とその効果について概説したものである。
 これまでの研究成果では、モルタル中の水酸化カルシウム生成量の低減効果を有する混和材(航路スラグ微紛末、フライアッシュ、シリカフューム)を適切に組み合わせ、かつ水結合材比を適切に選定することによって、硫酸に対する抵抗性に優れた断面修復モルタルの配合設計を確立した。
 また硫黄酸化細菌の繁殖抑制を目的としたコンクリート混和用抗菌剤(銀・銅担持ゼオライト抗菌剤)を開発した。

D3 既設処分場からの廃棄物の掘り上げと再整備について   大成建設(株)  臼井 直人
 一般廃棄物最終処分場の残余年数は平成10年度末で12.3年と報告されているが、依然として残余容量が逼迫している地域もあり、これらの地域では新たな処分場の確保が必要となっている。
 一方、厚生省は平成10年に焼却灰を埋立処分している全国の一般廃棄物最終処分場を調査し、そのうち538箇所を不適正な処分場と指摘し、これらに対して適正化を指導している。
 筆者らは、遮水工等の整備されていない処分場に埋立処分されている廃棄物を掘り上げ、掘り上げた跡の処分場を再整備する方法を提案している。
 ここでは、環境事業団の助成事業として行った、九州地区の一般廃棄物最終処分場内での埋立廃棄物の掘り上げと処分場の再整備の実証実験の概要について報告する。

D4 自然風を利用した集合住宅用24時間換気システムの開発   西松建設(株)  佐藤 健一
 窓を閉めて生活することが多くなったことや、建物の気密化に伴う換気不足によりシックハウス症候群などの問題が起きている。
 そこで、通常はファンを利用した24時間換気システムを設置して必要換気量を確保するが、ファンが稼働するので常時電力を消費する。
 自然の風力は新しいエネルギー源であり、本研究開発では都市のインフラのひとつとして捉え、自然風を利用して消費電力を抑えながら集合住宅の24時間換気を行うシステムの開発を行った。
 開発では換気システムの計画を行い、部品開発、システム性能の検証、その実用性を検討した。
 また、気象庁データを利用して日本の主要都市における風力の分析も行った。
 本システムにおける設計換気量は床面積80m2の住戸の0.5回/時に相当する100m3/時とした。
 過剰換気防止のために独自に開発したダンパーを給気ダクト内に設けてあり、弱風時の換気不足を防止するために給気ダクト内の風速を感知して自動運転する補助ファンを設けてある。

D5 下水道システムに対するコンクリート腐食対策技術の評価と開発   日本下水道事業団  遠田 和行
 我が国の下水道処理人口普及率は、平成12年度末で62%となり、下水道事業は、コンクリート構造物等の膨大なストックを抱えて、建設・普及から高機能化・効率的な管理の時代を迎えている。
 都市機能基盤の一役を担う下水道施設は、下水管きょ、ポンプ場、処理場から構成されており、密閉された施設内で進行する硫酸塩還元細菌と硫黄酸化細菌が関与する硫酸(酸環境の発生)によるコンクリート劣化が問題となって久しい。
 この十数年で顕在化した下水道施設に特有な硫化水素の発生に起因する硫酸によるコンクリート腐食に関して、コンクリート腐食環境の発生、コンクリート腐食の機構を示し、対策技術の評価と開発の現状と課題を示す。

D6 有機性廃棄物のメタン発酵処理とエネルギー回収   鹿島建設(株)  後藤 雅史
 生ごみ等の有機性固形廃棄物を、メタン発酵処理することによって効率良くバイオガス化するシステムを実用化し、1997年以来、大型複合商業施設等で稼動している。
 本システムは、高温(55℃)メタン発酵ならびに炭素繊維担体を用いた固定床方式を採用し、生ごみ等に多く含まれる固形分の可溶化、有機物のメタン化に優れている。
 運転実績によると、本システムは生ごみ中の有機物の約85%をバイオガスに変換し回収することできる。
 メタンを主成分とするバイオガスは5,000〜6,000kcal/m3程度の発熱量を有しており、燃料ガスとして有効利用が可能である。我々は、回収バイオガスの有効利用法としてリン酸型燃料電池及びマイクロガスタービンによる発電試験を実施し、生ごみから回収したバイオガスによる発電が可能であることを実証した。

D7 都市型揚水発電(NaS電池の活用)による下水道施設の電源整備   東京都  岸 丈夫
 大都市の合流式下水道が抱える電源の現状と課題から、実用化した電力貯蔵技術の一つであるナトリウム−硫黄電池(NaS電池)を活用し、電力会社の停電回数等の減少傾向の背景を認識した上で、下水道施設に必要な「電源の安定化」、「コスト縮減」、「環境改善」を実現する考え方を導入実例に基づいて報告する。

D8 小規模現場における建設廃棄物共同巡回回収システムの構築   西松建設(株)  堀場 夏峰
 西松建設と戸田建設は、平成11年10月4日の業務提携発以来、「産業廃棄物の低減・活用技術の開発プロジェクト」を共同研究開発テーマの一つとして取り上げている。
 そこで、建設工事中に発生する廃棄物の分別回収システム適用現場を拡大し、回収効率化を目指す、「巡回回収システム」の試行実験と産廃関連情報の共有および回収・リサイクルを支援することを目指す「産廃情報システム」の開発を行った。
 本編では、回収システムの概要と成果および情報システムについて報告を行う。

D9 都市熱源ネットワーク効果検討事例   鹿島建設(株)  金子 千秋
 本報では、今後再開発が予定されている大崎駅周辺地区(建物延床面積70万u)に対して、高温水広域ネットワークを適用した場合のケーススタディを行い、省エネ、CO2削減、事業性等を総合的に検討して、その有効性を把握した。
 これは、既存の港清掃工場(焼却能力900t/日)並びに新設の大井清掃工場(同600t/日)を排熱源とし、その熱を送るための高温水搬送幹線を山手通り沿いに導管ルートをとった高温水広域ネットワーク(導管延長5.7km)である。
 その結果、清掃工場の排熱を所内動力用発電以外は全て熱利用(高温水広域ネットワーク)とすることにより、従来方式(ガスボイラ+吸収冷凍機)に比べて39%の省エネ、58%のCO2排出量削減が可能となり、地球環境に優しい廃棄物のエネルギーリサイクル都市の実現が図れることがわかった。

E.耐震対策技術・防災計画
E1 M本社ビルの1階柱頭免震レトロフィット   五洋建設(株)  星野 昭雄
 民間オフィスビルであるM社ビルの免震レトロフィット工事を実施した。
 同本社ビルは新耐震設計基準(1981年施行)に準拠して設計された1995年竣工の建物であるが、より高い耐震安全性が確保できるよう建物の免震化を図 ったものである。
 敷地や建物の制約条件などから、1階柱頭部での中間層形式による免震化とした。
 改修工事は本社ビル機能を維持した「居ながら施工」で進められ、建物1階の柱頭部分を切断し当該部位に免震装置を設置した。
 今回の工事により、建物性能としては耐震安全性の向上のみならず、交通振動にたいする居住性の改善といった日常微振動の低減効果を確認することができた。
 また、施工時の耐震性能確保や計測管理などにより、建物安全性、健全性を維持したまま工事を完了することができた。

E2 ねじ込み式マイクロパイルによる既設基礎の耐震補強   (株)鴻池組  橋立 健司
 既設基礎の耐震補強技術として、ねじ込み式マイクロパイル(以下MH-MP)を用いた工法を開発した。
 MH-MP工法は、鋼管に4枚の翼を取付けた杭を直接地中に回転埋設する工法である。MH-MPの支持力は、これまでの載荷試験の結果により設定されている。
 この支持式を用いて、地震時保有水平耐力法により補強が必要とされる既設基礎モデルに、MH-MPによる増し杭補強を行った場合の試設計を行った。
 この結果、MH-MPの耐震補強としての有効性が認められた。また、耐震補強としての施工は空頭制限下の施工となるため継手箇所が多くなると考えられる。
 そこで、MH-MP用の機械式継手として、スプライン継手を開発した。スプライン継手の曲げ試験を行い継手の性能確認を行ったので合わせて報告する。

E3 千葉中央港地区における建設副産物の再利用と液状化対策   都市基盤整備公団  小林 儀一
 既成市街地の都市機能更新を図る地区においては、現地の建築物や埋設管等の既存構造物の解体撤去で多量の建設副産物が発生する。
 一方、兵庫県南部地震以降、都市部の地震対策が見直されているなかで、建設副産物を利用した液状化対策の事例紹介。

E4 大地震に対する都市地下ライフラインの防災技術の現状と今後の課題   中央復建コンサルタンツ(株)  鈴木 猛康
 1995年兵庫県南部地震を契機として、地下ライフラインでもレベル2地震動を対象とした耐震設計が、本格的に実務で行われるようになった。
 しかし、応答変位法に基づく耐震設計法は、従来の域を出ていないのが現状である。
 そこで本稿では、都市トンネル縦断方向の耐震設計の観点から、まず地震時に表層地盤に発生する直ひずみについて検討した。次に、地下ライフラインに適用される地震対策技術の現状を考察した。
 その結果、(1)水平成層地盤中の地震波動の伝播で発生する地盤直ひずみは、大地震時の減衰、表面波としての伝播を考慮すると、特殊な部位を除けば大きな損傷にはつながらない、
 (2)不整形地盤では局所的ながら大ひずみが発生する可能性があり、その評価には3次元的な解析モデルが不可欠である。
 (3)地震対策としては柔構造化技術と免震技術を条件に応じて使い分ける必要があり、その耐震性能照査には軸対称モデル等の詳細モデルが不可欠である、ことを結論づけた。

E5 光ファイバーセンターを用いた都市構造物のヘルスモニタリング   清水建設(株)  柴 慶治
都市を構成する各種の建築物や土木構造物、ライフライン系構造物の多くは築後40年近くが経過しており、使用状態を適切に評価して劣化状況および余寿命を検査・診断し、適切なタイミングで補修・補強していくことが求められている。
 また大地震や洪水などの災害時には、直ちに被災度を判定して立入・通行・運用の可否を判断し、速やかに修復し、社会基盤の長期におよぶ機能停止による障害を可能な限り低減することが必要であり、構造ヘルスモニタリングの重要性がますます認識されつつある。
 こうした都市構造物のモニタリングを支える技術として、航空宇宙や機械工学の分野で適用されてきた光ファイバーセンサーが最近注目され、実用に供され始めている。
 本報では最近開発した光ファイバーセンサーを用いてトンネル、地中埋設管、地下タンク、高層建物の構造モニタリングを実施した事例を紹介する。

E6 越谷レイクタウン地区におけるGISを利用した盛土管理システム   都市基盤整備公団  鐙 英輔
 低地地区の造成において、外部からの建設発生土の搬入から盛土施工と地盤改良の施工、地盤の圧密による沈下量の計測、施工計画の見直しまでを一元管理するシステムを構築した。
 このシステムはGIS(地理情報システム)を使用しており、従来の管理手法と比較して、即時性、管理の綿密さの面で優れており、施工展開、施工内容を建設発生土の搬入状況(土量、土質)にあわせ柔軟にかつ迅速に変更することを可能としている。
 また盛土材料の建設発生土の搬入履歴を詳細にデータベース化することで、盛土材の履歴の追跡が将来にわたり可能であり、トラブル発生時の対応を容易としている。
 さらに造成および地盤に関するデータの多くが共通のGIS上のデータベースに蓄積されるため、将来の宅地に関する情報公開等にも容易に対応可能であり、今後このシステムも開発予定である。

E7 杭基礎で支持された地上式タンクの液状化に関する大型振動台実験   西松建設(株)  萩原 敏行
 本研究は、杭基礎で支持された地上式タンクを対象とした大型振動台による液状化実験について述べたものである。
 実験には兵庫県南部地震で観測された地中観測波を用い、入力地震動のレベルや地盤の液状化が杭基礎に及ぼす影響について検討した。
 その結果、深さ方向に生じる杭の応力特性は入力加振レベルにより大きく異なる様相を示した。
 大規模地震時には液状化による地盤変形が卓越し、地盤剛性の急変する層境界部付近で杭に生じる応力が急増する特徴を示した。
 また、杭基礎に地盤改良を施した実験結果より、層境界部で応力集中を示す杭応力を液状化無対策に比べて約60%まで抑制できる液状化対策効果の有効性が確認された。
 さらに、軸対称FEMによりシミュレーション解析を実施し、解析は実験を良好にシミュレーションできることが示された。

F.都市地下空間計画・技術
F1 真空圧密工法の既設住宅地との近接施工事例   清水建設(株)  横山 勝彦
 この工法は、近年、地盤改良のコストダウンが可能な工法として施工実績が増加している。
 本論文では、その工法概要を説明し、施工事例として、既設住宅地に近接した宅地造成工事における調整池部基礎地盤改良工事での事例について紹介する。

F2 今後の地下街のあり方について   都市地下空間活用研究会  西田 幸夫
 地下街は、都市再生が叫ばれている都心部において、地下をつなげる歩行者空間として、公共性をもった都市施設として明確な位置づけをするべきであると考える。
 当研究会では地下街を、『中心市街地活性化に果たす役割が大きく、かつ地下街を公共性の高い都市施設』ととらえ、地下街事業ひいては地下空間の有効活用を促進していく観点から、政令指定都市等の地下街を中心に、アンケート及びヒアリング調査を行い、この問題に関する検 討を進めてきた。
 一方、地方分権推進一括法の施行にともない、今まで地下街を規制していた『5省庁通達』が廃止されたことから、規制緩和とは異なる新たな規制・基準等づくりが求められている。
 本論文は、当研究会の『中心市街地と地下街のあり方』分科会メンバーによる基礎調査を基に、具体的な規制・基準等の提案等を行うための課題整理および今後の地下街のあり方を明らかにすることを目的とした。

F3 近年の地下空間施工技術について   大成建設(株)  小林 昌巳
 我が国の地下空間施工技術は、都市部における多くの地盤が軟弱地盤である点、インフラ幹線が道路地下空間を占有する点、トンネルの用途、低コスト化・工期短縮の社会要請から、大深度、大口径、長距離、高速施工、急曲線、急勾配、覆工、搬送、異形断面あるいは地中接合技術の開発を行い、この10年間で飛躍的な進歩を遂げている。
 都市再生の観点からも、地下空間の活用は今後の社会資本整備に必要であり、今後の地下空間施工技術については、地下空間の輻輳、作業スペースの確保困難という施工条件の克服、コスト、効率性、安全性はもとより、環境アセスメント、ゼロエミッションなど幅広い視点での総合的な検討が求められている。
 本稿では、弊社の保有技術を中心に近年の地下空間施工技術を記述する。

F4 交通機関の新しい立体交差工法「HEP&JES工法」   鉄建建設(株)  千々岩 三夫
 近年、社会基盤整備が進められる中、交通施設相互の交差は避けることができない。
 このため、鉄道線路下、道路下に横断構造物を構築し、円滑な旅客輸送、交通量の増大を確保する立体交差が増加している。
 そこで、既設交通に影響を与えることなく、短い工期、かつ低コストで路線下横断構造物を構築するHEP&JES工法を開発した。
 HEP(High speed Element Pull)工法は、従来のエレメントを発進側から推進機によって挿入する方法にかわって、到達側からPC鋼より線でエレメントをけん引する精度の良い施工法である。
 また、JES(Jointed Element Structure)工法は、軸直角方向に力の伝達可能な継手を有するコの字形鋼製エレメントを連結して本体構造物とする 構築法である。
 HEP&JES工法は、この両者を組み合わせ、路面下に非開削で箱形ラーメン形状または円形などの構造物を延長に制約されずに構築できる合理的な施工技術である。

F5 ラッピング工法の開発   五洋建設(株)  松岡 義治
 近年のシールド技術の課題は、大深度の高水圧地盤におけるシールドトンネルの漏水対策や、腐食性環境下の地盤でのセグメントの劣化対策が挙げられる。
 これらの課題に対応するため、ラッピング工法の開発に着手した。
 ラッピング工法は、シールド掘進と併行して1リング毎に巻立てられたシートでセグメント外周全体を覆うことで、セグメントと地盤とを遮断したシールドトンネルを構築する工法である。
 このため、止水性と耐久性が高いシールドトンネルを構築することができる。
 2000年度にラッピング工法における高速溶着装置・施工機構・専用防水シートを検討し、φ3478o実証実験シールド機を使用して気中での実証実験を行い、ラッピング工法の機構・機能および施工性の検証を行った。
 本稿では、ラッピング工法の概要と実証実験の結果を報告する。

F6 大深度掘削用シールド機の要素技術の開発   コマツ  森岡 享一
 近年注目されている大深度地下利用のためのシールド掘削において、高水圧対応技術は欠かせないものである。
 高水圧下でのシールド掘削では、第一に各部のシール性、第二に高水圧下では容易でないカッタ交換の回数低減が課題となる。
 これに対して今回、高水圧対応シールを装備する国内初の大型19"(インチ)ディスクカッタを開発した。高水圧対応ディスクカッタは、ベアリングシール部に圧力バランス式を採用し、ベアリング室の内圧と外圧をバランスさせることにより高水圧に対応可能とした。
 また、国内最大径となる19"ディスクカッタは、従来の最大径であった17"ディスクカッタと比較して、カッタライフ、掘削性能ともに向上させた。
 本稿ではこれを中心に大深度掘削における要素技術について紹介する。
 またこれらの技術を実機に適用し、良好な結果を得たので合わせて紹介する。

F7 新しいセグメントと搬送システムを適用した共同溝の建設   (株)大林組  近藤 由也
 八潮共同溝T期工事では、内面平滑・高剛性・高耐久性を特徴とする「水平コッター式セグメント」を中口径トンネルとして初めて採用した。
 さらに、水平コッター式セグメントの発展型である「先付水平コッター式セグメント」を試験的に採用しており、その機能および特徴と、同工事への適用結果について報告する。
 また、急勾配部を含むトンネルにおいて、永久磁石の磁気摩擦力を利用し、人員・資機材等を安全に高速搬送できる「磁石ベルト式搬送システム;BTM(Belt Type Transit System by Magnet)」をシールドトンネル工事に初めて採用したため、その動作原理とシステム構成、特徴を紹介し、実工事への適用結果について報告する。

F8 シールドのスポーク回転式カッタビット交換工法の開発と実施   清水建設(株)  久原 高志
 従来、シールドのビット交換時には地盤改良などにより地山を改良し作業員が人力で交換作業を行っていたが、筆者らはこれら狭隘な場所での作業を必要とせず、機械的にビットを交換する工法を開発し、実用化した。
 本工法はシールドのカッタスポーク回転させる方法としてカッタヘッド旋回駆動力を利用したものであるため、ビット交換専用の駆動装置を必要としないことが特徴である。
 またこれら装置の作動状況は運転席監視モニタで確認が可能なため、作業はオペレータ1名で可能である。
 実施工ではビット交換のスポーク回転には装備しているカッタ駆動用電動機45kw×13台のうち3台のみを低速回転で使用した。
 また硬質砂礫地盤を1,400m掘進後にこの装置を作動させることで約23分という短時間内でビット交換をおこない、この工法の確実性を検証した。