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A.環境・アメニティインフラ技術 |
A1 自然循環方式による湖沼・河川の水質浄化技術 鉄建建設(株) 鈴木 輝彦 |
近年、都市周辺部の河川・湖沼等においては、市街地化の進展に伴い、生活雑排水等の汚濁による水質環境の悪化が問題となっている。
特に下水道施設が整備されていない地域においては生活雑排水の他、畜産系施設、単独浄化槽等からの糞尿や田畑からの雨水による肥料等の流入等が、水質の富栄養価の要因となっている。
河川・湖沼の水質改善を行うには、汚濁源付近で汚濁を阻止することが流域全体に水質を保全することができるので効率的な方法と考えられる。
そこで今回、生態系に影響がなく安全に水質を改善する技術として「自然循環方式による湖沼・河川の水質浄化技術」の開発について紹介することにした。以下に浄化技術の概要を示すとともに、現場フィールド実験結果を踏まえて浄化機能の有効性について述べる。 |
A2 石炭灰を主原料にした舗装用カラー骨材の開発 (株)竹中工務店 国島 武史 |
石炭火力発電所から排出される石炭灰を有効利用するために、石炭灰を焼成してカラー骨材を製造する技術を開発した。
この技術は、多くの石炭灰が焼成することにより茶系に発色することを利用したもので、これに舗装用骨材としての目標値を満足するように仕上げたものである。
本論文では電気炉による石炭灰基本焼成実験およびカラー舗装の施工を報告している。基本焼成実験から、本法に用いる石炭灰としては、塩基性成分とりわけCaOが少ない石炭灰がむいていること、原粉から細かな成分を分級したフライアッシュが緻密な骨材を製造するのに向いていること、石炭灰焼結体の発色の要因である石炭灰の鉄分量はせっ器土と同程度であることを明らかにした。
施工は、本法によるカラー骨材を用いて3種類のカラー舗装により行われた。追跡調査の結果、1年後の舗装に要求される変形等の目標値を満足することを確認した。 |
A3 さいたま新都心の公共空間デザイン 都市基盤整備公団 平林 義勝 |
平成12年5月に街びらきをした「さいたま新都心」は、設置されたタイトな街びらき目標に向け、基盤整備と建築工事を同時併行して行った地区である。そのため、公共空間と建築空間の景観デザインを空間的、景観的連続性が確保できるように設計段階でデザイン調整を行うことが可能であった。
デザイン調整は景観コーディネーターに滋賀県立大学の内井昭蔵先生を迎え、街区内事業者、基盤整備事業者が構成員となった景観デザイン調整会議において行った。調整のキーワードは「ゆるやかな統一」である。
並行して都市公団、埼玉県、地元三市で構成された委員会において、「さいたま新都心景観形成方針」をベースに、「さいたま新都心公共空間デザイン指針」を策定した。デザイン調整の結果に基づき、多様で独自性のある道路整備、官民共同によるバリアフリー対応サインの整備、街角ひろばの個性化(街区内シンボルツリーの設置)などが実現した。 |
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A4 調整池を活用した自然環境の回復に関する事例研究 清水建設(株) 那須 守 |
都市的土地利用への転換は生物生息空間の質的・量的低下と孤立化をもたらし、生物多様性つまり景観・群集・種・遺伝子の多様性を低下させる要因となっている。
そのため近年、公園緑地、河川緑地、工場緑地、学校、屋上緑地などを相互に結合していくことによって都市の生態系を回復することが求められている。
調整池は、雨水流出を抑制することを目的とした防災施設であるが、水域から陸域にいたる多様な環境を形成する可能性があり、生物生息空間のネットワーク(ビオトープネットワーク)の要素として活用が期待される。
筆者らは、千葉県東金市の土地区画整理事業(開発面積96ha)において、開発によって消失する湿地環境の回復と絶滅危惧植物「タコノアシ」の保全を目的に調整池を活用したビオトープを創出した。
本論では生物多様性の高いビオトープを創出する目的で試みた階層的生態系保全計画を提示し、そして調整池の水辺ビオトープにおける生態系復元の状況とタコノアシの保全方法について考察した。
施工後2年間のモニタリング実施結果から、創出した水辺ビオトープではサギ類等の高次消費者を頂点とした生態系が復元され、地域のビオトープネットワークの拠点として生物の生活環境や発生の場として機能していること、そしてタコノアシの群落復元ではポット苗法が有効であることを示した。 |
A5 トリヴェール和泉・はつが野における周辺環境と調和した「里みち」づくりの試み 都市基盤整備公団 原田 衡 |
周りに新興住宅地等が隣接するトリヴェール和泉では、周辺地域と調和のとれた街づくりが目指されている。その造成等工事の展開には周辺住民の理解と協力が不可欠であるが、環境悪化と捉え、反対する方が出る場合もある。
本稿では、開発地区内の林地保全要望を契機として、開発者を中心に行政、地域が協力し、地区内外にまたがる、自然性・地域性豊かな遊歩道的施設を提案し整備したことにより、新旧住民が自然や人と親しみ、交流する機会を提供する他、開発と地域の融和を図った例として、はつが野における“里みち”づくりを紹介する。 |
A6 淡路島国際公園都市整備等の特徴と今後の方向性について 兵庫県 橘 俊光 |
兵庫県淡路島北部で整備を進めている淡路島国際公園都市は、国営明石海峡公園と県立淡路島公園を核に斜面地の早期緑化や淡路夢舞台の整備、国際園芸・造園博覧会の開催など新たなランドスケープ創出を視点に展開している点が大きな特徴であり、大規模な土取り跡地の自然環境復元・創出例としてもわが国で初めてのものと言える。
また、平成11年4月開校した淡路景観園芸学校の特徴は、新しい概念である「景観園芸」の専門家を養成するわが国で初めての学校であり、新しい考え方で取り組んだ独創的なランドスケープの教育、研究環境を、兵庫から全国、全世界に向けて発信するものであると言える。
本県では、淡路島国際公園都市の整備等を契機として、これらの取り組みや考え方をさらに進め、“21世紀兵庫の森”の創造に取り組み、21世紀の国土ビジョンとして提示されている「ガーデンアイランド」の実現に寄与すべきと考えている。 |
A7 人工地盤を活用した新たな都市環境の創出 埼玉県 松田 完司 |
平成12年5月5日「さいたま新都心」が街びらきを迎えた。浦和、大宮、与野の3市にまたがる地域に、20世紀の幕引きを飾るに相応しい新しい街が誕生し、やっと、埼玉の「顔」が見えてきた。整った顔であるが、更に美しく成長させていくためには良い環境が必要である。
その意味で「けやきひろば」は自然そのものが四季折々の場面転換を行う「優れた都市環境装置」であり、高層建築物が立ち並ぶ都市空間の中にあって、人工地盤上の1.1haのケヤキの森は市民や来訪者に潤いと安らぎを与えており、魅力溢れる街に成熟させていくための重要な環境要素である。
本稿では、さいたま新都心の枢要な場所に位置し、移動と滞留を支える都市的な機能とともに都市景観デザインの原点としての役割を担う「けやきひろば」の計画理念に関する新たな考え方と、人工地盤における220本のケヤキの植栽手法に関する先進的な試みについて紹介する。 |
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B.都市構想の計画・事例 |
B1 地方におけるネットワークシティ構想 新日本製鐵(株) 成田 高一 |
日本の21世紀は、個人を軸とした多様性を求める時代である。都市住民のニーズの幅は広がり、自然への回帰、環境重視、家庭・コミュニティの再構築の動きはますます高まろう。
また、同時に、日本は、21世紀を迎え、広域交通ネットを完了し、インターネットの世界に突入しようとしている。これらは、大都市から地方へと人と仕事の流れを作り出す働きを持つものである。
こういうことが近々予想される状況の中で、地方は、地域活性化・地方分権という観点で、土地、自然、文化という基本的地域資源を見直し、都市住民にとって魅力ある都市づくり、地域づくりを始める必要があろう。
本構想は、これに対する一つの方向性として、地方の多自然と既存地方都市インフラを最大限活用し、低密度開発・環境共生開発を前提に、費用対効果の高い、また、将来の変化にも対応でき得る小規模クラスターネットワーク構造を特徴とする「地方におけるネットワークシティ」を提案するものである。 |
B2 出雲市駅周辺地区における都市の再構築 出雲市 大國 勝 |
出雲市は、都市基盤整備を図る上で、どのような、まちづくりを図ってゆくのかを検討した結果、「出雲」の特徴を生かした「街づくり」を図っていくことが、市民の希望であることが「各種検討委員会」の中で明らかとなりました。
「出雲」の特徴とは何か。何といっても、全国にその名が行き渡っている「出雲大社」・銅剣等の発掘で興味が沸いた「古代出雲の歴史」・ヤマタノオロチ退治で有名な斐伊川と神戸川の沖積平野に残る「築地松」と周辺の山々の「緑」、又、両河川の清流から得られる「水」と市街地を流れる「川」を生かしたまちづくりを行うこととし、その表現は、中心市街地の「顔」となります「駅周辺地区」で「鉄道高架事業」「幹線街路事業」「土地区画整理事業」の都市再生事業の中で実施することと致しました。
ここでは、「ふるさとの顔づくりモデル土地区画整理事業」と地区内の代表的建築物「地域交流センター」について、述べます。 |
B3 北摂三田ウッディタウンのセンチュリーパーク整備計画 都市基盤整備公団 杉崎 直哉 |
本稿では、兵庫県三田市にて、都市基盤整備公団が開発を進めてきた「北摂三田ウッディタウン」地区内の公共公益施設エリアである「センチュリーパーク」における地区センター施設整備について紹介する。
具体的には、都市型ホテル、大規模商業施設及び市民センターの誘致に合わせ、駅前デッキ、広場等の周辺整備を当公団で行ない、建物事業者側と協力して、建物と一都市基盤施設が一体となった空間を実現することで、街のシンボルづくりを行なった。
特に、今回整備した公開道路「センチュリーモール」は、幅員30mの「センチュリー大通り」というセンチュリーパークのアメニティ軸の一部であるとともに、2つの商業施設に挟まれた位置にもあることから、「通路空間」と「商業空間」を併せ持った準公共空間として整備することとした。この結果、街の賑わい空間の拠点となる施設の実現が図られた。 |
B4 高架下有効利用のための建設技術 清水建設(株) 塩川 英世 |
連続立体交差事業によって生み出される新たな高架下空間の多目的・高付加価値利用を可能にするため、各種要素技術の研究開発に取り組み、「高架融合型施設建設技術」として集大成した。
当研究開発における主要な開発技術は以下の通りである。
生活施設を一体に組み込んだ「高架融合型施設構想」
耐震性向上・工期短縮・コストダウンに寄与する「CFT高架橋構造」
列車の振動・騒音を抑える「コイルばね防振軌道システム」
列車通過時に生ずる磁気を制御する「磁気シールド技術」
高架下に太陽光を取り入れる「太陽光集光誘導装置」
本報告では、これらの研究開発の背景、技術内容等について紹介する。 |
B5 鉄道の連続立体交差化を中心とした折尾地区総合整備計画について 北九州市 深堀 秀敏 |
JR筑豊本線、鹿児島本線が結節する折尾駅周辺地区は、古くから国、県の行政機関が立地し、また県内有数の学園都市として発展してきた本市西部の核であり、隣接市町を含めた広域拠点として重要な役割を果たしている。
近年、大学・研究施設等の立地や住宅開発の進む北九州学術・研究都市へのアクセス拠点でもあり、都心・副都心に次ぐ地域中心核として、都市基盤の整備や文化・教育・商業等の都市機能の集積が待たれている。
しかし、折尾地区では、鉄道3線(JR筑豊本線、短絡線、鹿児島本線)が市街地を複雑に分断し、面的な交通遮断による慢性的な交通渋滞を引き起こすとともに、道路をはじめとする都市基盤整備の阻害となり、交通ネットワークの形成や土地利用の高度化、密集した住環境の改善に支障をきたしている。
当整備計画は、効果的な都市基盤整備とまちの大改造を図るため、鉄道の迂回移設を伴う立体化という、これまでにない連続立体交差と併せて道路・駅前広場の整備、面整備を一体的に行うことにより、地区の抱える課題を解決するとともに、特色あるアメニティ溢れたまちづくりを推進するものである。 |
B6 千葉ニュータウン「いには野」地区におけるバリアフリー整備 都市基盤整備公団 平川 壮一 |
平成12年3月に街びらきを行った千葉ニュータウン「いには野」は高齢化や環境・健康指向の高まりといった時代の要請への対応を目指し「健康と安心の街」をテーマに街づくりを進めており、北総・公団線の新しい始発駅「印旛日本医大」を中心に生活関連施設を徒歩圏に配置したり、街全体のバリアフリー化を図っている。
バリアフリー整備に当たっては、道路空間部分での勾配低減や段差解消などの工夫のほか、住宅および外構部分での住宅事業者への指導も行っており、都市の基盤として「街の基本性能」という観点から既存のローコスト技術の組み合わせにより新たな整備費や維持管理費の発生・増大をなるべく避けて街全体のバリアフリー化を実現している。 |
B7 連続立体交差事業・新幹線計画と併せた長崎駅周辺の再整備構想 長崎市 林 一彦 |
長崎市は、市街地の約7割を斜面地が占める地形的な制約と、一極集中型の都市構造などにより、中心市街地への都市機能の集中、交通渋滞、公園・緑地などオープンスペースの不足といった問題を抱え、近年の人口は微減傾向にある。
昭和61年に策定された長崎県の「ナガサキ・アーバン・ルネッサンス2001構想」では、長崎全体の再生に向け、長崎港臨海地帯から浦上川に沿った平坦地を対象とした再開発構想が示され、「コンベンション都市(情報交流・集積都市)」を都市経営戦略として提案している。
このうち、臨海部における都市再開発は一定の整備が進み、次なる目標は、連続立体交差事業、九州新幹線長崎ルート建設計画が進められている「長崎駅周辺地区」での大規模な都市改造事業となっている。
ここでは、この大規模な都市改造事業である「長崎駅周辺地区再整備事業」に関し、土地区画整理事業手法を用いた再整備構想について、検討段階のものを紹介するものである。 |
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C.物流・交通・情報通信インフラ技術 |
C1 GISを用いた斜面市街地における交通手段導入解析の試み 長崎大学大学院 後藤 恵之輔 |
現在、我が国の斜面市街地では、高齢化率の増加や若年層の流出といった人口構造問題、福祉問題、防災面の整備不足に関する問題など様々な問題がある。
特に、全てに関連してくる交通環境問題については、中心市街地に隣接していても、地形的制約から交通環境の整備が進んでいないのが現状である。したがって、今後のより良い斜面市街地の交通・住環境整備は、斜面市街地の住民が気軽にかつ安全に利用できる新たな移動手段の導入が必要不可欠と考える。
本論では、交通・住環境整備を行うための一つの方策として、斜面市街地で適用が可能と思われる複数の交通手段を適応勾配・輸送力・建設費などの項目を含めて総合的に評価し、そこで得られた交通手段について、GISを用い長崎市の、ある斜面市街地で、勾配・コントロール・ポイントなどの評価項目により、最適な交通手段の選定や路線の検討などの新たな交通手段の導入解析を試みたものである。 |
C2 新しい路面電車・LRTを支える低騒音軌道実現にむけて (株)新潟鉄工所 大野 眞一 |
地球環境問題の深刻化、高齢化社会の到来を受けて、都市の公共交通として既設の「路面電車」が見直されている。路線の延伸を視野に入れた計画も公的支援制度の拡充に伴い具体化しつつある。
また、都心部における自動車交通の代替として、軌道系では相対的に建設費が安い新しい路面電車「LRT」を地方中核都市の基幹交通、大都市の補助交通などとして新規採用の可能性調査が始まっている。
このような背景のもとで、鉄車輪、鉄レールを使用する先進の「LRT」システムは、沿道に対する環境負荷を極力軽減するために、車両のみならず軌道の改良に取組む必要がある。
これまでに我が国の路面軌道では、舗装および線路保守作業が容易で、かつ低騒音を持続可能な方式は実現していない。国内外の現状を調査し、新しい軌道技術について先進国を含めて調査・研究した結果を報告する。 |
C3 e−ビジネス時代を支える物流及び情報基盤 大成建設(株) 舘 康太郎 |
急速なITの進展、新会計基準導入による企業のキャッシュフロー経営への指向など、近年大きな企業の環境変化が起こっている。このような変化は、企業のビジネススピードを速め、コアコンピタンスへの経営資源集中投入を促し、更に新しいビジネスモデルを可能とした。
これら企業活動の結果のひとつである物流も、従来と様相を異にした展開が見られる。即ち、ITにより加速されたビジネススピードに比較し、物流速度の立ち遅れや、従来の生産者起点の物流或いは生産活動が消費者起点の活動へと大きくシフトを強いられており、これらに対応する新しい物流業態や、SCM(サプライチェンマネジメント)の視点でのIT活用が始まっている。
これまでの物流の役割の変遷を振り返るとともに、新しい時代にもとめられる社会基盤としての物流の課題を展望した。 |
C4 磁気環境改善技術 鹿島建設(株) 齋藤 健 |
社会のIT化は目覚しく、精密電子機器の普及などに伴い、最近10年程で新しいタイプの環境問題が顕在化してきている。問題の原因である磁気は電気機器や電力線、鉄道などから発生しており、そのレベルが電子機器の耐性を超えると誤動作や動作不良が起こる。
このため、建物や都市、施設の計画などに際し、磁気環境の検討が重要になっている。
磁気の発生源としては送電線、鉄道、電気室、溶接、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴イメージング)などがある。また、磁気は土やコンクリートでは遮蔽できないため、地下鉄や地下電気施設なども発生源となる。一方、磁気の影響を受ける機器としては、テレビやコンピュータ・ディスプレイ、MRI、電子顕微鏡、EB装置(電子ビーム回路描画装置)などがある。
本稿では、磁気環境、磁気障害及び則定・評価技術、対策技術について概要を述べる。 |
C5 広島市の新交通システム(アストラムライン)の整備効果について 広島市 大村 昭彦 |
平成6年8月に開業したアストラムラインは、市街地の拡大に伴い人口が急増した市の北西部地域の交通問題解決と人口10万人規模の新拠点「西風新都」の開発促進を主目的として導入したものである。
アストラムラインの整備によって、幅広い効果がもたらされることは、他都市の新交通システムや都市モノレールといった「中量軌道系システム」の整備事例からも明らかであったが、それまで、こうした「中量軌道系システム」の整備効果を定量的かつ体系的に整理した事例はなかった。
このため、本市では、建設省と合同で平成3年度から10年度にかけて、交通対策やまちづくりへの寄与などの幅広い面から、新交通システムの整備効果をできるだけ定量的、客観的に把握することを目的として、調査・分析を行なったところであり、ここではその概要について報告する。 |
C6 交通流シミュレーションによる交差点交通処理計画の実験 京都市(セントラルコンサルタント(株)) 樋口 吉隆 |
混雑等の交通問題が生じているような既存交差点の交通処理計画においては特に、当該交差点の交通状況を十分考慮した評価を行った上で、最適な改善方策を選定することが重要となる。
そこで京都市では、交通の要素が総じて多様であり、通常の一般的な手法では十分な評価が困難であると考えられた都市部の観光スポットに位置する交差点の交通処理計画について、試行的に交通流シミュレーションの活用による机上実験を行い、改善方策のメニューに関する調査及び評価に役立てることができた。
本論文は、その結果にもとづいたものであり、交通の現状の把握から交通流シミュレーションの適用、改善メニューの評価などに至る調査全体のプロセスについて報告するとともに、活用したシミュレーション及び数列のシミュレーション結果の概要、当調査の実施を通じた実務面での今後の留意事項等について報告するものである。 |
C7 札幌市における公共交通情報提供システムの展開について 札幌市 秋元 克広 |
札幌市内の公共交通は軌道系交通機関と複数のバス事業者の路線が競合しているが、公共交通機関離れが進んでいる。
公共交通機関の利便性を高め、都市交通公共交通機関の利用促進を図るため公共交通総合情報システム(SMILE)を開発し、平成10年から交通事業者の情報を一元的に集約し時刻表、乗換え案内などの情報提供を案内センターなどで行っている。
今年度、国と札幌市が共同で、交通機関の利用情報、観光地の情報などをインターネット、携帯電話などに提供するシステムを構築し、12月より実証実験を行うこととしている。
この実証実験と併せて、公共交通総合情報システムをインターネット化し、市民が直接検索ができるシステム構築に取り組んでおり、このシステムの概要と今後の展望について述べる。 |
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D.供給・処理・エネルギーインフラ技術 |
D1 「財政」からみる下水道事業の効率化に向けて 日本下水道事業団 今島 祥治 |
下水道事業の状況は、全国平均で見ると、使用量収入が汚水に係わる維持管理費のすべてと起債償還費の3割強を賄っているが、財政力が劣る町村下水道事業では、使用料収入は起債償還分には一切充当されていないと言われている。
以上の立場から行政が自己の下水道財政状況を経年的に把握するためのモデルとして、下水道協会から出された下水道収支分析モデルが広く使用されている。本稿では、まず、この収支分析モデルでは触れていない自治体規模別の下水道管理の状況とその経年変化について明らかにする。
次に、一般会計から下水道企業会計への繰り入れについて、経済状況および市町村の財政状況を示し、最後に、この状況から、下水道事業の効率化を目指すべく、その執行評価方法、アカウンタビリティーについて考察する。 |
D2 都市の一般廃棄物処理系の評価に関するケーススタディ (株)NTTファシリティーズ 福永 和広 |
地球環境問題への対応は国際社会的な課題の一つであり、資源、エネルギー、発生廃棄物等を内部循環させて環境負荷を最小限に抑制するために環境共生型社会インフラシステムを早期に整備することが望まれている。
こうした背景から、廃棄物、エネルギー、土壌、大気、水などの環境要素を対象とした環境共生型社会インフラシステムの計画方法を検討している。
本報では、内部循環化された都市の一般廃棄物処理系の計画手法として、処理系全体のライフサイクルにわたる環境負荷量、コスト等を定量的、概活的に評価するための方法を検討し、あるモデル地域を対象に想定したいくつかの廃棄物処理ケースにおける環境負荷量(CO2排出量、NOx排出量、SOx排出量等)及びライフサイクルコストに関するケーススタディー評価を行った。 |
D3 多摩ニュータウンにおける電線類ローコスト地中化の取組みについて 都市基盤整備公団 辻 和之 |
都市公団では新住宅市街地開発事業により、多摩ニュータウンの開発を進めている。戸建街区についても潤いのある良好な街並み景観の形成を目的として昭和63年頃より電線類の地中化を行ってきた。
近年では、電線類の地中化は整備水準の一つとして積極的な導入を図っている。しかしながら、電線類の地中化を行うためには多大な費用負担を伴う。そこで、地中化コストの縮減を図るべく、「埋設帯方式による電線類のローコスト地中化」が考案された。
従来の区画道路(幅員6m)における地中化では電力、電話、ケーブルテレビともに土被りを1.2m確保していたが、本方式では、埋設帯(幅0.75m)を道路両側に設け、土被りを0.6m〜0.8mと浅くする事により土工事コストの縮減を図っている。
さらに、宅地取出し部等の土工事を公団で一括して行う事により、各社単独の土工事に比べロスの無い、効率的かつ低コストな施工を実現した。都市公団多摩ニュータウン事業本部が行っている区画道路における地中化コスト縮減の取組みについて紹介するものである。 |
D4 セントラル式上質水供給システムの開発 (株)熊谷組 佐々木 静郎 |
近年、関東や関西などの大都市周辺地域では、人工集中によって、下水道などの都市基盤整備が遅れ、家庭からの生活排水が水道水源である河川や湖沼に流入し、水質汚濁を引き起こしている。
このため、浄水場における薬品投入量が増大し、「カルキ臭」や「カビ臭」といった異臭味が問題となるだけでなく、発ガン性が指摘されているトリハロメタンなどの有機ハロゲン物質も検出されるようになり、水道水に対する不平、不満の声が高まっている。
さらには、最近のグルメ指向、健康指向ともあいまって、おいしい水、安心して飲める水に対するニーズが年々高まっている。そこで、上記の問題点を解決するため、水道水から上質水をつくり、建物内のすべての蛇口から供給することができる「セントラル式上質水供給システム」を開発したので、その概要を報告する。 |
D5 建築物一体型カラー太陽光発電システムの適用 鹿島建設(株) 伊藤 正 |
通産省のニューサンシャイン計画の一環として新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託を受けて、大同ほくさん(株)、昭和シェル石油(株)、鹿島建設(株)の3社共同で建築物の屋根や外壁などに太陽電池を組込む「建材一体型太陽電池モジュール」の開発を実施し、実物件に適用した。
主な特徴は、意匠性も含めた多様な建築部位への適用性であるが、工場の既存建屋の陸屋根や地上3階建のオフィスビル南面外壁、超高層ビルの腰壁に縦連窓タイプで設置した事例等の実績がある。
建築物一体型太陽光発電システム(BIPV:Building Integrated Photovoltaics)の適用推進技術として、建物全体としてのBIPVの存在意義の明確化、影の影響を考慮した発電量予測システムや建物デザインをCADでシミュレーションできる支援システムの整備を進めており、今後も多様なニーズへの対応やコスト低減を目標に、新たなモジュール構造、取付け工法、省エネ空調との融合などに取り組む必要がある。 |
D6 東京ガス中原ビルの省エネルギー改修 東京ガス(株) 甘利 直彦 |
地球温暖化問題は緊急かつ重要な問題であり、建築分野においても既築建物の改修に対する省エネルギー化はこれから重要かつ重点的に取り組んでいくべき課題である。
このような背景のもと、既築ビルを改修することによってエネルギー的に優れた建築物として残すことができるか、という課題に取り組んだのが東京ガス中原ビル省エネルギー改修である。
中原ビルではマイクロタービンコージェネレーションや、太陽熱利用のほか断熱の強化、高効率照明など総合的な省エネルギー技術の導入により、改修前に比べ23%(一次エネルギー換算)のエネルギー削減を目指している。 |
D7 都市熱源ネットワーク効果検討事例 鹿島建設(株) 金子 千秋 |
清掃工場や発電所等の都市排熱を長距離輸送すれば、市街地では化石燃料の消費を徹底的に抑えた地域冷暖房社会の実現により快適な都市生活が可能となる。
本報告は、高温水広域ネットワークシステムが都市リノベーションの先導施設として国の推進方針が出されたことを受けて調査研究を進めている「高温水広域ネットワークシステムの具体化に関する調査研究」の成果の一部を紹介するものである。
1999年度のケーススタディにより、排熱源のある東京都大田区平和島から需要地のある港区新橋までを結ぶ熱輸送導管(総延長:約18.8Km)両側の建物(総延床面積:約400万u)に、清掃工場、発電所、工場計6件の排熱を供給した場合、冷暖房給湯のための年間熱需要の94%が排熱で賄えることが分った。 |
D8 都市インフラの維持向上を目指す東京都の下水道再構築 東京都 立石 記透 |
下水道普及率100%概成を達成した東京都区部の下水道には、いぜん数多くの課題が存在する。東京都では、これらの課題を解決するため、再構築事業を積極的に進めている。
本文では、東京都区部の下水道管渠について、老朽化、浸水、合流式下水道の改善、耐震性能の低下等の問題点について明らかにする。
また、再構築事業の推進方策としての、事業の平準化、既設管渠情報の把握と活用、複合的効果の発現、現場実態やコスト縮減、ゼロエミッションへの取組み等を示す。
さらに、それらを実現するために東京都が開発・採用している管路調査データのデジタル化・展開図化処理、管渠周辺空洞調査機、管路診断システム、管渠更生工法等の最新技術・最新工法等について報告する。 |
D9 循環型次世代都市エネルギーインフラ評価ツールの開発 (株)東芝 船津 徹也 |
電力市場の自由化によりエネルギーシステムを取り巻く環境は大きく変化しようとしている。従来の火力・原子力を中心とした大規模電源に変わり、都市の生活空間内に設置される分散電源が注目されている。
分散電源は、電気と熱を同時に供給できる高効率エネルギーシステムであることや、都市ごみを分解した水素・一酸化炭素を主成分とした可燃ガスを燃料として用いれば、都市内でのエネルギー循環が可能となる。
本稿では、次世代都市のエネルギーインフラを評価するツールとして開発を行っている、都市エネルギーシステムシミュレータを紹介する。
本シミュレータはガスタービンコジェネレーションシステムや燃料電池システムなどの分散電源モデルや熱源機器モデルから構成される。このシミュレータにより、都市エネルギーシステムの事前予測評価を精度良く行うことができる。その概要と性能について報告する。 |
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E.耐震対策技術・防災計画 |
E1 GIS−GPSを用いた構造物情報管理システムの開発 鹿島建設(株) 高橋 祐治 |
構造物の設計や施工、点検、補修などのデータを一括管理し、容易に取り出せるようにすれば、維持管理の作業が効率化されるとともに、補修や改修を適切な時期に行うことが可能となり、構造物としての寿命を延ばしたり価値を高めたりできる。
一方、兵庫県南部地震では、被害情報を迅速に収集することが二次災害の防止や復旧活動上重要であると広く認識された。
このような観点からモバイルコンピュータ、GPS、デジタルカメラ、携帯電話などの最新の情報機器を活用して、平常時には構造物の調査と管理に適用し、地震発生時には構造物の被災度評価や復旧活動に役立てることができる携帯用構造物情報管理システムを試作した。
本システムの主な特徴として、@平常時から地震時まで一貫して使用可能、A構造物位置情報の取得、確認にGIS/GPSを用いて省力化、ビジュアル化を実現、B目的地までのルート探索機能は平常時の調査や地震時の復旧資機材配送計画に活用可能、などがある。 |
E2 薬液注入固化工法による既設石油タンク地盤の液状化対策の改良効果について 西松建設(株) 今村 眞一郎 |
平成7年の改正消防法の施工に伴い、昭和52年2月以前に許可を受け、または許可申請された危険物屋外貯蔵タンクの液状化に対する早急な安全対策が義務づけられるようになった。
狭少狭隘で配管等が錯綜する実際のタンク基地の現状を考えると、注入固化工法が施工上もっとも現実味のある工法である。
しかしながら、注入固化工法の設計手法が十分確立されていないため、「タンク側板より10mの範囲」の地盤を改良することになり不経済となるため、合理的な改良範囲を定め、より経済的で確実性を高めた設計手法を確立する必要がある。
そこで本論文では、低強度用度の薬液木注入固化工法による地盤改良について、3次元モデルによる遠心振動模型実験を実施し、タンク直下のみの改良でも未改良地盤の変形に比べ1/4以下に抑制できる上、他工法と比べても遥かに大きな改良効果のあることが確認できた。
さらに、改良体の深さ方向の改良度合いによる効果の違いも確認し、部分的な未改良層の残置も実用上問題ないと判断できる結果を得た。 |
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F.都市地下空間計画・技術 |
F1 バーコードを利用したセグメントJIT施工管理システム 清水建設(株) 渋谷 啓司 |
都市部でのシールド工事では、地上用地の確保難から発進立坑基地スペースが十分取れないことがよくある。また、計画ルートは、道路直下を通ることが多く曲線施工が余儀なくされ、トンネル覆工材のセグメントの種類も必然的に多くなる。
従って、都市域でのシールド工事では、狭隘な用地内に必要量のセグメントが保管でき、タイムリーに確実に切羽まで供給できることが要求される。
本報告は、地上用地と立坑内部を立体的に有効利用することにより、設備の設置エリアを最小にし、入庫・保管から出庫・搬送までの一連の作業を自動化・無人化した「バーコードを利用したセグメント・ジャストインタイム(JIT)施工管理システム」について報告するものである。
本システムは、シールド掘進計画に合わせてトレーラで搬入されたセグメントを入庫台車に取り込み、移動しながらセグメントに貼付されたバーコードでその種別を判読してセグメントの入庫登録を行い、入庫台車からリフターを介して立坑内のラックに自動保管し、シールドの掘進に合わせ要求されたセグメントを自動出庫し、坑内を切羽まで搬送台車で自動搬送するものである。 |
F2 4心円シールド工法による上下ニ段の地下鉄駅の建設 (株)間組 粥川 幸司 |
都営地下鉄12号線六本木駅工区における地下鉄駅の建設では、道路幅員が狭い、日本有数の繁華街であり昼夜を問わず地上交通が激しい、重要地下構造物が存在するといった施工に関する厳しい制約条件があった。
そこで、このような条件のもとで実際に施工可能な工法案を抽出し、工法の利点、欠点を考慮し工法の絞り込みを行いながら、さらに、周辺の住民や社会活動に及ぼす影響を極力抑え、かつ工期に間に合う施工法として、4心円シールド工法を開発、実用化した。
本工法の特徴は、必要最小限の駅空間をシールド機で掘進するのと同時に駅構造を一気に構築できることにある。本工法を採用した結果、地下40m、延長118mの上下ニ段の地下鉄駅ホーム部を、わずか10ケ月の短期間で構築することができ、12号線環状部全体の開業に間に合わせることができた。
本報では、4心円シールド工法の開発経緯と工法の概要および掘進実績を述べる。 |
F3 都心高密度地区における立体的駅周辺整備計画 都市地下空間活用研究会 森 英信 |
我が国の都心の多くは、交通上の要衝としてある鉄道駅を中心に発展をとげてきた。それらは都市の経済、文化、市民生活に係わる多様で濃密な都市活動が繰り広げられており、都心高密度地区を形成している。
しかし、駅前の地上空間は、公共的な空間利用を図るスペースに限界があり、ゆとりある空間利用を図るためには、その中心となる鉄道駅前の公共的空間を地上・地下一体にわたって積極的に利活用することにより、地区アイデンティティのある個性豊かな多層空間を立体的に形成する可能性を持つものと考える。
本論は、都心高密度地区における地上・地下を立体的に多層化して利活用する駅周辺整備計画について、東京都心の表玄関である東京駅とその周辺をモデルに検討し、提案するものである。 |
F4 揺動式掘削システムのシールド工法への適用 コマツ 川合 一成 |
最近のシールド工事においては、コスト縮減や効率化をめざした種々の工法やシステムが提案され、実用化されてきている。その一つとして、矩形断面シールが注目され実工事に適用されつつある。
今回、「揺動式カッタヘッド」と「隅角部カッタ」を組み合わせた新しい矩形断面掘削システムを開発したので、ここに紹介する。
本システムは油圧ジャッキの伸縮運動でカッタヘッドを揺動回転させるとともに、揺動角度に合わせて大型の油圧式隅角部カッタを伸縮させ、矩形断面をシールド外形に沿って精度良く掘削できるようにしたものである。
そして、特に「揺動式カッタヘッド」については、カッタヘッドの揺動角度に応じて変化するトルクの変動量を抑制するため、駆動部のジャッキ配置や制御方法に工夫を凝らした。 |
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