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A.環境・エネルギー |
A1 都市バイオマスに向けた廃棄物の処理・資源化・エネルギー化 清水建設(株) 須賀 正 |
生ごみ・剪定枝・家畜ふん尿等の有機性廃棄物の処理・資源化・エネルギー化の有力技術にメタン発酵・バイオガス発電技術がある。廃棄物からの新エネルギー生産は、資源循環型社会の構築に向けた有望な市場と見込まれている。
論文では、酪農地帯における家畜ふん尿のメタン発酵、バイオガス発電技術及び液肥利用の実用化について述べる。また、都市近郊部での生ごみ・家畜ふん尿等の有機性廃棄物を用いたメタン発酵、バイオガス発電技術及び排水を放流するための水処理コストの低減に関する研究についても述べる。 |
A2 建物グリーン設計における運用実態の把握 (株)エヌ・ティ・ティファシリティーズ 酒井 憲司 |
環境に配慮した建築設計(建物グリーン設計と呼ぶ)の運用実態を定量的に把握するために、企画検討段階と実施設計段階における定量的確認方法を検討した。企画検討段階では設計をする際にどのような環境配慮項目を想定したか、また実施設計段階では企画検討段階において想定した項目を実施図面に反映しているかについてをチェックシートにより把握し、さらに効率的なチェックが可能で結果の集計も行えるプログラムを開発した。
本報ではこのプログラムを活用して1 年間の全国で実施されているグリーン設計の運用実態を調査し、企画検討段階における環境配慮項目数、実施設計段階における実施率などを分析した。また工事種別毎や地域別毎に採用した環境配慮項目を抽出し、それぞれの特徴を示した。 |
A3 江戸前ハゼ釣復活への試み 鹿島建設(株) 棚瀬 信夫 |
江戸前ハゼ釣。かつての東京港では、大人から子供まで多くの人を楽しませた。しかし、今、それは埋立などによって消失してしまった。本論分では、このハゼ釣復活を目標に生物と建設との組合せによる環境強制技術を活用した東京港内で実施されている埋立事業の試みを紹介する。 |
A4 浄化と地耐力確保を考慮したVOC汚染土壌の原位置処理事例 西松建設(株) 武井 正孝 |
著者らは、揮発性有機化合物(VOC)に汚染された土壌の原位置浄化工法の開発を進めている。この工法は、スラリー系の深層混合処理工法の機械・設備を利用し、浄化薬剤を混合したスラリーを地中に送り込み、ループ状のビットを用いて混合攪拌を行い、VOCを浄化する技術である。浄化薬剤としては、酸化鉄系VOC分解材を用いる。また、浄化対象の地盤の地耐力を原地盤なみのレベルに回復させるために、スラリーには石膏系固化材も混合している。開発の一環としてスラリーの配合試験を行い、目標とする浄化効果と地耐力の得られるスラリーの配合に関し、目処をつけることができた。また、本工法を実汚染サイトで適用した結果、浄化効果、地耐力ともに概ね目標レベル(環境基準、原地盤なみの地耐力)に達する結果が得られた。 |
A5 鉄道高架化事業における環境保全効果の検証 長崎県 清水 正明 |
鉄道と交差する3箇所の踏切を除却し、交通の円滑化及び機能的な土地利用の実現を図るため佐世保駅周辺鉄道高架化事業を約1.6Kmの区間で実施した。整備効果の検証に当たって、経済性の観点からは、整備費を供用予定時期に換算した費用と関係交通の時間短縮便益及び経費減少便益等の総和を比較することで算出できるが、環境意識の高揚に伴う大気環境保全の観点から、何らかの指標で定量的に評価できないかと考えた。
そこで、踏切除却により変化する車の走行状態に着目し、二酸化炭素の排出量の違いを算定することで、環境保全効果を検証した。社会資本整備にあたっては、常に地球規模的環境保全の意識を持つことが肝要である。本検証を環境意識の高揚の一助としたい。 |
A6 実測とシミュレーションによる新宿地域冷暖房周辺地区の温熱環境評価 東京大学 大岡 龍三 |
近年、都市化に伴う土地被覆の改変や人工排熱量の増加のために、ヒートアイランド現象が顕著になり、屋外温熱環境が悪化している。このような背景から、今後、都市再開発や建物を新たに計画する場合、その周辺の温熱環境に与える影響を事前に予測評価して把握しておく必要性が高まるものと考えられる。本論文では、従来から著者らが開発してきた構造格子に対応した対流放射連成シミュレーションによる屋外温熱環境予測手法を複雑形状街区に適する非構造格子に対応させた屋外温熱環境予測ツールに拡張を行い、新宿地域冷暖房周辺地区を対象として行った実測結果と予測手法により得られた結果を比較し、予測ツールが実街区における屋外温熱環境評価に有効であることを確認した。 |
A7 食品系廃棄物のメタン発酵による処理とその適用実績 鹿島建設(株) 牧内 崇志 |
循環型社会の形成推進に係る諸法規の整備に伴い、有機性廃棄物の有効再利用、資源化技術の実用化が求められている。中でも、嫌気性発酵法(メタン発酵法)は,有機性廃棄物の処理・ エネルギー資源化技術として関心を集めている。近年,各地に食品系廃棄物等を対象とする 大型嫌気性発酵施設(バイオガス化施設)が相次いで建設され、稼動を始めた。
弊社でも,高温固定床式メタン発酵システムによる食品系廃棄物バイオガス化施設を商品化し,順調に稼動している。平成15 年に稼動を始めた砂川の施設では、年間平均185m3/t-投入生ごみのバイオガスが発生している。また、回収したバイオガスはマイクロガスタービン発電機により電気エネルギーに変換し、自施設内に供給している。 |
A8 みんなでつくる環境共生のまち「船橋美し学園 芽吹の杜」 (独)都市再生機構 田辺 陽子 |
近年、人々のライフスタイルも多様化してきており、従来の持ち家志向から、ライフスタイルに合わせて土地や家は利用できればよいという考えも増え、住まいに対するニーズは実に多様化してきている。また、都心回帰といわれているが、必ずしも都心を希望する人ばかりでもなく、自然環境等の郊外のよさを見直して、子育て期やリタイヤ期にあえて郊外を希望する人も多い。本論文では千葉県船橋市の環境共生まちづくりを目指す「船橋美し学園 芽吹の杜」を事例に、同地区のハード・ソフトに渡る様々な取り組みを紹介し、魅力あるまちについて考察したい。 |
A9 大型振動ふるいなどから発生する超低周波音の吸音・遮音対策 鹿島建設(株) 鶴田 政博 |
シールドトンネル工事などで用いられる大型振動ふるいは、超低周波音(20Hz以下の直接には聞こえない音)を発生し、周辺の住宅などの窓ガラスや建具などを振動させ、騒音問題を引き起こす。 本開発技術は,組立式遮音パネルの内側に組立式吸音レゾネータを設置して、吸音・遮音効果で超低周波音を低減するものである。 実証実験を行い、厚さ30cmのコンクリートの遮音効果に匹敵する平均32dBの大きな低減効果が得られている。 |
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B.情報・交通 |
B1 東京都区部における都市計画道路の整備方針について 東京都 細見 明彦 |
東京都区部における都市計画道路の完成率は約58%にとどまり、慢性的な交通渋滞、それに伴う時間と経済損失、環境負荷増大など様々な都市問題を引き起こしている。
東京都では、これまでも概ね10年間で優先的に整備すべき路線を定めた事業化計画を定め、都市計画道路の計画的かつ効率的な整備に努めてきた。しかしながら、従前計画(平成3〜15年度)の策定以降、社会経済情勢が大きく変化したことから、未着手の都市計画道路を対象とした新たな整備方針をとりまとめ、平成16年3月に公表した。主な内容は、(1)必要性の検証 (2)優先整備路線の選定(今後12年間で優先的に整備すべき路線の選定) (3)建築制限の緩和 (4)概成道路における歩行者空間の拡充方策。本論文は、これらについて概要をとりまとめたものである。 |
B2 ETC料金所の電波吸収舗装 鹿島建設(株) 横田 依早弥 |
ETCは渋滞緩和,利便性の向上、排気ガスによる環境汚染の減少等を目的とし、2001年3月から一般運用が開始されたが、利用台数は年々増大しており2004年9月末には155万台/日となり、利用率は20%を超えた。今後は早い時期に利用率が50%を超え、更に利用者に役立つシステムとして展開して行くものと予想される。利用率が増えるに従って料金所の開閉バーが開かないトラブルが聞かれるようになってきたが、その原因の一つにETCで使用している無線の通信異常がある。料金所に設置された路側アンテナや車載器アンテナから発信された電波が、周辺の構造物や路面などからの電波の反射により通信エラーを起こすのである。このような通信エラーの軽減を目的として、酸化鉄を混入した電波吸収舗装を開発した。 |
B3 富山市の富山港線LRT化の取組み 富山市 谷口 博司 |
富山港線は、JR富山駅と富山市北部の岩瀬浜駅を結ぶ、全長8.0キロ、駅数10の単線電化路線で、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)の地方交通線として運行されている。しかしながら、近年の富山港線の状況は極めて厳しく、平成8年から14年の6年間で約40%も減少しました。
富山市では、この富山港線を鉄道から路面電車に転換し、併せて運行頻度の向上や新駅の設置などサービスレベルの向上を図ることにより、再生する事業を進めているものであります。
現在は、第3セクターによる新会社を設立し、平成18年4月の開業を目指し事業を推進しているところであり、この論文はこの取組みを取りまとめたものです。 |
B4 新駅開業に伴う通勤手段の転換可能性に関する調査〜高崎市の事例 群馬工業高等専門学校 江原 豊 |
自動車への移動分担率が高い群馬県において、自動車交通から公共交通利用への転換を促す場合に、潜在的な需要者層を特定することや、課題の抽出を継続して調査することは、有効な施策の立案や、実現化のための重要な要件のひとつと考えられる。本研究では、都市部における潜在的な公共交通機関利用可能者が求める交通サービスの提供方策を探ることを目的に、群馬県高崎市の高崎問屋町に新しく開業する高崎問屋町駅を対象事例として、高崎問屋町に位置する事業所および従業員の通勤実態を把握するとともに、新駅の開業が通勤意識に対して与える影響と自動車通勤から電車・バス通勤への転換可能性を調査した。また、高崎問屋町地区を循環するようなバスを導入した場合の利用意向も併せて調査した。その結果、一定の条件が整備されることで通勤手段の転換可能性が向上することや、循環バスに対する積極的な利用意識が明らかになった。 |
B5 エコ・パークアンドライドの取り組みについて 神奈川県 最上 祐紀 |
エコ・パークアンドライドプロジェクトとは、朝夕の通勤時に鉄道駅まで自動車を利用する市民と、日中の業務に自動車を使用する企業が、環境にやさしい小型電気自動車を共同利用するシステムである。
このシステムは、カーシェアリングの1形態であり、パークアンドライドとカーシェアリング、電気自動車利用による環境効果を組み合わせたものである。
このプロジェクトの平成11年度からの取組み概要及び平成16年度より民間事業者と連携を図り、新たに取り組んだカーシェアリングネットワークの検証に関して報告を行う。 |
B6 交通ボトルネック対策のための都市環境に配慮した施工技術の提案 (株)大林組 太田 行 |
本報告では、「20 世紀の負の遺産」とも言われ慢性的な交通渋滞の原因となっている交通ボトルネック問題を解決するための施工技術として、都市環境に配慮して、短期間で経済的に立体交差化を実現する「REFO 工法」と「URUP 工法」を提案するものである。「REFO 工法」は、立体交差橋を3 ヶ月で急速施工する工法で、工事期間中の騒音・振動を低減し、ヒートアイランド現象を抑制する環境にも優しい施工技術である。メンテナンスフリーで、実質的なコストダウンにもつながる。「URUP 工法」は、従来長期の工事期間が必要であったアンダーパスによる立体交差化を短期間で完成させる画期的な施工技術である。アプローチ区間も含めた全線をマトリックスシールドで連続施工することで、急速施工が可能であり、工事に伴う二次交通渋滞など周辺環境に与える影響を最小限に抑えることが出来る。これらの工法の概要について技術的視点からその特徴について提案する。 |
B7 横浜市の地域財産・『みなとみらい線』 横浜高速鉄道(株) 橋詰 勝彦 |
みなとみらい線は、神奈川県横浜市の都心部に位置し、JR・東急・京急・相鉄・市営地下鉄が集まる大ターミナル横浜駅から、現在開発が進んでいる「みなとみらい21地区」や関内地区等の既成市街地をとおり、元町に至る延長約4.1qの鉄道新線である。
全線地下構造のみなとみらい線は、横浜、新高島、みなとみらい、馬車道、日本大通り、元町・中華街の6駅が新設され、横浜駅で東急東横線と全列車相互直通運転が行われており、東横線東白楽駅付近〜横浜駅は従来の高架式から地下化されている。
横浜駅を除いた5駅については、それぞれ地区を代表する地域財産と位置づけ、地区特性に合わせた個性的な駅デザインを実現し、「まち」と一体化したものとなっている。 |
B8 磁気浮上式システム・東部丘陵線(リニモ)の事業概要について 愛知県 広浜 全洋 |
東部丘陵線は、電磁石によって車体を浮かせ、リニアモーターで推進させるシステムを採用した日本初の実用化路線である。東部丘陵線を整備する名古屋東部丘陵地域は、県が推進している「あいち学術研究開発ゾーン」の中核的地域であり、当路線はこの地域の骨格的な交通基盤として整備している。また、名古屋市地下鉄東山線の終点である藤が丘駅付近や東西幹線道路である県道の渋滞を緩和するとともに、地下鉄東山線と愛知環状鉄道とを結ぶネットワークを形成するものである。さらに、東部丘陵線沿線にある愛知青少年公園は、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)のメイン会場であり、東部丘陵線が博覧会のアクセスとして位置づけられていることからも、国際博開催前の平成17年3月に開業する運びとなった。 |
B9 端末物流効率化方策の効果 (株)エックス都市研究所 折原 清 |
端末物流の改善については、これまで各地で様々な取り組みが実施されてきたが、その推進にあたっては関係者間の合意形成をいかに図っていくかが重要であり、また、合意形成の促進にあたっては、関係者に効率化方策を展開した場合の効果を提示していくことが必要である。そこで、端末物流効率化方策について、関係する主体毎に、どのようなメリット、デメリットが生じるかを整理するとともに、端末物流をめぐる問題の多い地区を数地区、モデル地区として設定し、各地区において方策を講じた場合、どのような効果量があるかを推計した。合意形成の一層の促進を図っていくためには、効果分析等についてさらに精緻化を試みる必要がある。 |
B10 まちづくりと連携した豊田地域ITS(START☆T21) 豊田市 寺澤 好之 |
豊田市では、「環境型交通都市」の実現を目指して、「豊田地域ITS(STAR☆T21)」を策定し、民間企業や市民団体、NPO等と協働しながら、ITSを活用した総合的な交通対策に取り組んでいる。現在は発展期として位置付け、渋滞解消、公共交通利用促進、市街地活性化、交流促進及び交通事故削減の5つを課題として整理し、課題ごとに設定した定量的な目標実現に向けて、豊田市ITS情報センターの開設やDSRC駐車場、デマンドバスシステム、スマートICなどの社会実験を、まちづくりの視点を取り入れながら展開している。今後も、官・民・行政から成る「豊田市ITS推進会議」を活用しながら、「人と環境にやさしい先進的な交通のまちづくり」の実現を目指していく予定である。 |
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C.まちづくり |
C1 都市再生合意創出に資する都市再生大学校構想(都市再生合意創出プログラム)について
(独)都市再生機構 芦野 光憲 |
都市再生のための市民・住民の合意創出については世界的課題であり、米国では都市再生のためのプログラムとして、1980年代にNPOのナショナルメインストリートセンターでフォーポイント・アプローチ(商標登録)が開発され、全米で約1,700地区に都市再生の実績があがっている。イギリスではATCM、フランスではDIV等の組織があり、都市再生の仕組みに一定の成果が得られている。しかしながら、日本では、都市再生プログラムがなかったのが現実であった。
そのため、都市再生プログラム・新しい計画文化の取り組みとして、平成16年に委員会(特別顧問:伊藤滋早大特命教授、委員長大西隆東大教授)を設けて検討したアウトプットが「都市再生大学校」構想であり、世界の都市再生に学びつつ、沖縄県具志川市の事例研究、愛知県安城市、滋賀県大津市のケーススタディーを通じて、日本流の都市再生合意創出のプログラムを創り出した経緯と概要をまとめたものである。 |
C2 土留壁芯材本体利用技術の開発 清水建設(株) 大崎 雄作 |
近年,都市再生事業に伴う再開発による地下構造物の建設が数多く計画されている.対象となる構造物は狭隘なヤード内での施工が多く,用地の省面積化や地下空間の高度かつ有効な利用が求められている.また,建設コスト縮減・環境への配慮等の時代の要請にも対応可能な技術開発が課題とされている。
開発者は,これらの課題を解決するために,従来は仮設構造物として利用されていた土留め壁のH形鋼芯材を本体構造物として利用する技術の開発を実施した.本技術は,土留め壁の芯材に接合鉄筋等を溶接し,本体の鉄筋コンクリート部材と合成するものであり,各種の実証実験や大型構造物への適用を通じて,壁厚低減等の有効性が確認された。 |
C3 レコパネル工法の開発と施工 西松建設(株) 渡辺 徹 |
レコパネル工法は、下水道シールドトンネルを対象にした、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)製パネルによる新しい二次覆工工法である。シールドトンネルの一次覆工材であるセグメント内面に、防食パネルであるレコパネルを設置することにより、内面平滑性が確保できる。また、従来のコンクリート二次覆工に比べ、対薬品性の向上、工期の短縮と掘削断面が小さくでき、工事費のコストダウンが図れる。
また、一次覆工には鉄筋コンクリートセグメント(RC セグメント)や鋼製セグメント(ST セグメント)があるが、レコパネル工法はどちらのタイプにも対応可能である。
本報告ではレコパネル工法の概要、特徴、レコパネルの構造、材料性能、経済性、実施工等についてを紹介する。 |
C4 都市の地下構造物に対する大断面分割シールドの適用例 大成建設(株) 金子 研一 |
建物と地下道を結ぶ出入り口,建物と建物を結ぶ地下道をはじめ,防災上の理由から地下鉄道駅の出入り口といったトンネルの需要に対し,「大断面分割シールド工法」を適応させた2つの事例を紹介する。
1つは,大阪の地下鉄駅と換気シャフトを結ぶ換気トンネルであり,地表面下に大型の下水道管およびNTTの管路が敷設されていて,土留め杭が打設できない状況であった.そこで,非開削工法の一つで本工法が選定された。
大型の矩形トンネルを三つのトンネルに分割した構造に変更した.2つめは,断面の異なる2つの地下道に,1台のシールドを縦長に使用したり,横長に使用することで適応した事例である.このうちの一つは縦断線形を施工する。 |
C5 トンネルバルーン―覆工コンクリートトータルの養生工法― 西松建設(株) 佐藤 幸三 |
一般的に,トンネルの二次覆工は,施工サイクルを確保するためコンクリート打設後15〜20 時間程度で脱型し,その後は無養生の場合が多い.しかし近年、トンネル施工では粉塵等の作業環境を考慮して、坑内換気量を増大させるケースが多くなってきているため、打設したコンクリートに十分な温度、湿度が確保できずに覆工コンクリートに悪影響をおよぼす恐れが大きくなっている。
トンネルバルーンは、二次覆工コンクリート打設時および脱型後に繊維シートによるエアマットでセントルおよび覆工コンクリートを覆うことにより,坑内環境(温度、湿度、風)からコンクリートを保護し適切な初期強度発現と長期耐久性に優れたコンクリートを施工するトンネル覆工コンクリートのトータル養生工法である。 |
C6 ふるさとをしのばせる都市景観の整備と市民参加のまちづくり (独)都市再生機構 清水 良祐 |
都市機構がまちづくりを進める「八王子みなみ野シティ」は、「アーバンビレッジ」をコンセプトとし、「環境共生都市」「クラブライフ交流都市」をまちづくりのテーマに設定し、1.ふるさとをしのばせる美しい都市景観の形成2.みどり豊かな自然環境や広域水循環の保全・再生を柱とする環境共生3.周辺大学等の教育機関やNPO、住民等、地区固有の人的資源と連携した市民参加をキーワードとしてまちづくりを進めてきた。(土地区画整理事業・地区面積 約394.3ha・計画人口28,000 人・東京都八王子市)現在、13,000 人程度の人々が生活し、まちづくりは市民が主役となる「まち育て」の時代をむかえ、まちの熟成に合わせてコミュニティも大きく変化しようとしている。
機構は、豊かでうるおいのある健全な暮らし良いまちの実現を目指して、都市基盤整備を進めながら、一方では市民参加のまちづくりソフトを積極的に醸成してきた。本報告は、「まちの持続的な発展」に向け、地域コミュニティの秩序や活力が将来へ継続されるよう、周辺大学、NPO、八王子市、地域の市民団体、町会、小中学校等と連携した「地域資源を活用した市民参加のまち育て・都市管理」の成果である、「ユニバーサルタウンを目指した市民活動」、「市民による公園緑地のアダプト管理等」、「周辺大学によるまちづくり貢献」を紹介する。 |
C7 姫路都心部のまちづくり 姫路市 森 典 |
JR姫路駅を中心とする姫路市都心部は、市域を東西に貫くJR山陽本線により、南北に分断されているため、南北市街地の一体化が急務になっている。そこで、現在進められているJR山陽本線等連続立体交差事業を基幹事業として、土地区画整理事業、関連道路事業等の都市基盤整備を一体的におこない、南北市街地の一体化と交通の円滑化を図るとともに、発生する広大な貨物ヤード跡地等を活用し、ゆとりとうるおいのある都市環境の創造、さらには高度な都市機能を導入して播磨地域の中核都市にふさわしい魅力と活力にあふれる都心のまちづくりを進めることとしており、その考え方と現状を紹介するもの。 |
C8 市街地再開発事業における広場と地下鉄駅施設の整備事例について (株)日建設計 川原 伸朗 |
六本木一丁目西地区第一種市街地再開発事業(泉ガーデン)と都市高速鉄道第7号線(東京メトロ南北線)建設事業の事業が相互に協力し、東京都心部において交通結節拠点整備を行った事例の紹介。
駅施設の一部を市街地再開発事業で整備する施設建築物の共用部分の中に確保し、かつ施設建築敷地内に歩行者系広場を地下鉄駅舎と一体的に整備することにより、地下鉄駅舎に快適で広々とした空間がもたらされた。同時に、市街地再開発事業で整備した施設建築物利用者の利便性と駅前の賑わいがもたらされ、鉄道事業と再開発事業が相乗効果を生んでいる。別事業が協調して施行されたことにより駅前広場空間としての快適性や質の向上が図れた事例である。
この整備に至るまでの計画及び事業の経過と課題解決の方法を整理し、今後の類似案件の計画立案にあたって参考になる資料を提供する。 |
C9 吊り免振工法の開発による鉄道高架下ホテルの実現 (株)竹中工務店 五十嵐 信哉 |
これまで駅周辺の高架下は利便性の高い立地でありながら、騒音や振動が大きいため、駐車場や駐輪場、倉庫、飲食店等の利用に限られ、静けさが要求される用途での活用は困難と考えられていた。JR東日本と竹中工務店は、高架橋の耐震性に影響を及ぼすことなく、建物全体を防音・防振・免震する新技術、「吊り免振工法」を共同開発し、高架下ホテルを実現した。完成したホテルでは、列車通過時の室内騒音と床振動の目標性能として、日本建築学会における「建築物の遮音性能基準」のN−45(ホテル3級)及び、「建築物の振動に関する居住性能評価指針」のV−0.75(住居の居室・寝室)以上を設定し、全客室でこの目標を達成した。本論文では、吊り免振工法の概要と、高架下ホテルの実用化に向けた技術開発や設計・施工方法について報告している。 |
C10 雨水流出・排水現象を連成解析する都市型水害予測解析システム 鹿島建設(株) 松尾 元 |
近年頻発している都市型水害に対して2004 年5 月に「特定都市河川浸水被害対策法」が施行されるなど、河川と下水道が連携した浸水対策の取組みが始まっている。このような状況を踏まえ、本研究では都市域の雨水流出・排水現象について河川、下水道及び地表面氾濫をダイナミックに連成して総合的に解析できるシステムを開発したので報告する。なお、本システムは京都大学防災研究所井上所長の研究指導を受け、中部大学と鹿島との共同研究により開発したものである。 |
C11 大深度道路トンネルにおける分岐合流および拡幅技術 清水建設(株) 阿曽 利光 |
都市部の過密化に伴い交通インフラを地下に整備する必要が高まっており、交通インフラの中心となる高速道路においても、道路トンネルの建設もしくは計画が数多くされている。
従来、地下高速道路ランプなどの分岐合流部は開削工法で計画・構築されていた。しかし、地上の道路交通や環境に与える影響および地下構造物の輻輳などから、トンネルの大深度化と地中内で施工可能な分岐合流部築造技術や非常駐車帯の経済的な大断面トンネル拡幅技術の必要性が高まっている。このような要求に応えるため、非開削でトンネル坑内から分岐合流部や非常駐車帯を地中に築造する新しい技術を開発した。
本稿では開発した工法の概要と開発技術について紹介する。 |
C12 大地震による建物被害の復旧支援「建物地震防災情報システム」 (株)竹中工務店 瀬谷 均 |
発生が懸念されている「東海地震」のような大地震が起きると被害が広域に渡り、大規模な復旧活動となることが予想されている。「阪神・淡路大震災」では、大地震が起きた直後の被災状況の早期把握と初動対応、それを可能とする情報の共有化の必要性が指摘された。今回開発した「建物地震防災情報システム」は、大地震後の広域に渡る建物の被害についてネットワーク上で・地震発生直後の建物の被害を予測する機能・被害建物の診断・復旧情報を共有する機能を備えており、大地震発災後の復旧を情報伝達手段により円滑にするシステムである。 |
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D.景 観 |
D1 民間活力による都市部のオープンスペース整備のための計画技術 大成建設(株) 川崎 泰之 |
欧米のみならずアジアの大都市と比較して日本の都市部のオープンスペースは充足度が低い。都市再生における魅力づけだけでなく、都心居住回帰における生活空間としてもオープンスペースは、重要な役割を持つ。しかし、密集した市街地に新たに公園を整備するのは困難であり、これまでの官主体の整備から、民間活力を導入した整備へと移行しつつある。今日のこうした状況を踏まえて、本稿では、オープンスペース整備の課題と方向性を抽出し、民間活力を導入したオープンスペースの整備・管理運営を見据えた計画技術の提案を行う。 |
D2 獨協さくら橋の景観デザインについて (株)大林組 後藤 嘉夫 |
獨協大学新エントランス部(獨協さくら橋)整備は、大学利用者を駅から大学講内へ安全にアクセスさせる動線として、獨協大学が歩道橋を整備し、草加市に移管したものである。
獨協大学の周囲には伝右川(1級河川)が流れ、その河川が大学と周辺地域(松原団地)との境界線となり、まちとしての一体感が損なわれていた。本整備では、単純に歩道橋を架橋するだけでなく、大学のある街として、地域に開かれた大学としてのイメージ定着を図るための「大学の新しい顔づくり」と位置づけ、橋上及び両橋詰め空間を地域とのコミュニケーションの場となることを目指した。また、橋が架橋されることにより動線が変わり、新たな景観が形成される。本整備では景観軸の創出など、各視点場を整備し、それらの構成要素をトータル的にデザインすることで、空間アメニティを高めた。本報では、これら計画と景観設計について概要を報告する。 |
D3 エコロジカル・ランドスケープ手法による多自然型調整池の計画設計 清水建設(株) 小川 総一郎 |
エコロジカル・ランドスケープとは、「その地域の潜在能力を利用してその地域でしか成しえない環境を保全・創出することであり、その環境は人を含めた生き物にとって健全な生態系を持続させるものとなる」という計画設計手法である。
本稿は、この理念に基づいて、調整池機能と地域生態系保全の両立を図るために多自然型調整池を計画設計した事例を題材として、エコロジカル・ランドスケープによる具体的な計画設計のプロセスについて述べたものである。 |
D4 都心部における都市交通インフラの統合的整備に関する考察 大成建設(株) 風見 正三 |
日本橋は、日本の道路の起点であり、古くからの江戸の文化や歴史を現在に伝える東京の代表的な景観資源である。しかし、首都東京の発展に伴う高度な都市機能の集積によって、都心部の高度利用や首都交通インフラの整備が進み、日本橋の上空も首都高速が通過し、美しい日本橋の風景は阻害されてきている。このような現状の中で、日本では、景観緑三法をはじめとする様々な都市景観や自然景観に対する保全、修復、創造の取り組みが検討されるようになり、東京都心を代表する「日本橋」の再生は、国際都市東京の風格を創造し、日本の都市再生全体へとつなげていく重要な課題となっている。本稿では、このような日本橋の再生を果たすための都市開発手法として、現在の首都高速の機能を維持しながら、日本橋及び日本橋川の水辺景観を再生するとともに、日本橋地域全体の活性化を誘導する新たな都市交通インフラの整備手法及びその効果について考察を行うものである。 |
D5 歴史的建造物の外観保存における構造補強の提案事例 清水建設(株) 林 章二 |
歴史的建造物を保存かつ活用してゆく上で,阪神大震災以降,地震時における建物の安全性確保が必要とされてきている。得に,その建物が持つ意匠的,歴史的,学術的価値を損なうことなく耐耐震補強を行う手法がますます重要となってきている。特に,周辺の景観に大きく影響を与え,かつ活用を図るべく検討される歴史的建造物には,明治以降,昭和にいたるまでの大規模な近代建築も多い。本報告では,これらの近代建築に的を絞り,各建物の構造特性に対応した構造補強方法の検討,適用結果,および適用時に生じた技術的課題についても報告する。 |
D6 飯田町アイガーデンエアの景観デザインについて (株)日建設計 山本 秀樹 |
飯田町アイガーデンエアでは、既成市街地に囲まれた約5haの貨物駅跡地において、周辺のとの一体性に十分配慮しながら、緑あふれる整然としたまち並みを創出した。プランニングにあたっては、すでに成熟した市街地として成立している地域に全く新しい異質な要素をもち込むのではなく、新しいまちを地域に溶け込ませることを基本とし、その上で、新しいアメニティの構造を付加することをテーマとした。具体的には、 (1)地域に存在する緑の系・水の系・歴史の系などの様々な脈絡の重視、 (2)オープンスペースのネットワーク化による回遊性・にぎわいの場の創造、 (3)周辺との境界部分の垣根をなくし、歩行者中心のまちを実現するための地盤面へのこだわり、の3点を基本方針として、“快適なふつうのまち”をつくることを目指した。 |
D7 富山県における公共事業の景観づくりの取り組みについて 富山県 森田 直樹 |
富山県では、平成15年10月に、公共事業による先導的、総合的な景観づくりを進めるために、景観づくりに関して留意すべき事項を定めた富山県公共事業の景観づくり指針(以下「公共指針」という。)を策定しました。
また、この指針の適正な運用を図り、公共事業の景観づくりを効果的に推進するための体制(=仕組み)を構築するため、県土木部では平成16年度に体制の試行をスタートさせました。この体制をつくることによって、今までは担当者レベルで検討され、主観的な考え方によって進められがちであった景観づくりがシステム化され、公共事業全体の景観水準のレベルアップが図られるものと考えています。 |
D8 鉄道高架事業による新しい高知のまちづくり 高知県 森田 徹雄 |
JR四国土讃線高知駅周辺では、平成8年度より、高知県が事業主体の連続立体交差事業、高知市が事業主体の高知駅周辺土地区画整理事業、県市がそれぞれ役割分担して進める関連街路事業を三本柱とした「高知駅周辺都市整備」が進められている。
本文では、県が事業主体の連続立体交差事業を中心に、住民意見を反映しつつ専門委員のアドバイスを取り入れた高架橋の景観設計、ワークショップの開催を通じて整備方針を決定した側道設計、委員会やアンケート調査を通じて高知の陸の玄関づくりを目指した駅舎設計等について、その背景や概要を説明し、平成20年度の完成を目指す新しい高知のまちづくりに関する取り組みを紹介する。 |
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