記念講演会
東京工業大学特命教授並びに東京都市大学教授で、先進エネルギー国際研究センター長の柏木 孝夫様をお迎えして、「都市とエネルギー」と題してご講演をいただきました。
柏木先生は、エネルギー・環境システム、エネルギーシステム解析、冷凍・空気調和の分野がご専門で、政府の各種審議会の委員を歴任されています。また、2013年3月には、エネルギー基本計画の改定を議論する総合資源エネルギー調査会総合部会の委員、同部会の下に設けられた電力需給検証小委員会の委員長に就任され、ご活躍されています。
アベノミクスの成長戦略の要でもあるエネルギーに関する演題で会員の皆さまのご関心も高く、会場が満席になるほどの活況を呈する講演会となりました。
以下はご講演の内容の要約です。
■電力システム改革
・電力システム改革は日本の成長戦略そのものである。
・今、我々がやらなければならないことは、都市エネルギーを中心に電力システム改革を通して、これからの都市エネルギーシステムのあり方をグランドデザインし、インフラパッケージとして海外展開すべき。
■広域性
・50Hz、60Hzの壁で、受給逼迫時に電力融通に制限がある。
・太陽光、風力等の再生可能エネルギーを系統へ導入するには、電圧・周波数を一定の範囲にしなければならず、これが難しい。
・技術的な観点を踏まえて国民の負担が少なく最も適切な導入量を進めることを考えるべき。
・デマンドサイドのデジタル化、広域系統運用により、電力の上昇コストの抑制、電圧、周波数を一定の範囲にすることが可能。
■公平性
・小売新規参入自由化で大きな市場が都市部を中心に拓けてくる。
・新規参入者にとって公平なルールで戦える担保が必要。
・現状、大規模集中型電力と分散型電力の比率は、96:4であるが、2030年代の早い時期には、都市部を中心にこれを70:30にもっていくべき。(15%:コジェネ(天然ガス、LP)、15%:太陽光、風力、バイオマス)
■ネットワーク部門の中立性
・2016年4月に、新規参入、電力の小売りを家庭部門も含めて自由化されると、エネルギーとインターネット(ICT)とが一体化するスマートコミュニティが形成されてくる。
・デジタル化により株式市場と同様な市場ができ、様々なビジネスモデルができてくる。
・2018年〜2020年に、ネットワーク部門の中立、その1つの手段として発送電分離が提案されている。
・電力料金の規制が無くなる時期と発送電分離時期は一致する。
■今後どう変わるか
・今までのピークに合わせたオーバースペックのエネルギー受給システムが需要サイドに一部移ってくる。(ピーク対応の電源がデマンドサイドの電源に移ってくる。)
・コジェネ・再生可能エネルギー等の出力が一定しないものを、デマンドサイドでICTを利用して受給コントロールを行うようになる。
・ダウンサイジングの電力システムに移っていくことにより、それぞれの電源が適切(ピークを出さない)に稼働する時代がくる。この実現には、エネルギー容量密度の高い都市部でしかできない。
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意見交換会
記念講演会に引き続き、UITの黒川会長をはじめ、記念講演会の講師をしていただいた柏木先生、国土交通省都市局の多数の来賓の方々、並びに多数の会員の皆さまのご参加をいただき、意見交換会を盛大に開催いたしました。
黒川会長の挨拶に始まり、国土交通省都市局街路交通施設課長の高橋 忍 様による来賓のご挨拶並びに乾杯のご発声の後、参加者による活発な意見交換が行われ、盛況裡に終了いたしました。
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