A.環境・エネルギー
A1 緑化による都市暑熱環境緩和に関する研究   (株)竹中工務店  三坂 育正
 近年、重要視されるヒートアイランド現象に関して、都市の緑化や建物配置による通風効果など活用して都市の暑熱環境を緩和していくためには、都市や建物の計画・設計段階において予測を行い、その効果についての検討を行うとともに、効果の検証をしていくことが重要であると考えられる。
 ここでは、計画・設計段階において活用できる技術として開発した屋外温熱環境予測システムに関して、その概要と解析例について説明した。
 また、都市暑熱環境緩和対策である、都市緑化の主たる手法としての建物緑化について、緑化手法の違いによる効果を本予測システムで評価する上で必要となる効果特性を、試験体を用いた実験により確認した。
 さらに、大規模な緑化を行った建築物における温熱環境の実測から、建物緑化による周辺暑熱環境緩和効果の検証を行った。

A2 年間を通じた地中熱利用技術の研究   鉄建建設(株)  熊井 和雄
 地球環境問題への対応として、未利用エネルギーのなかでも地域偏在性が少なく、気象に影響されない地中熱の有効活用を目指している。
 現在、地中熱は積雪地域の道路融雪等に適用され始めてきているが、本研究では地中熱を建物に適用し、年間を通じてシステムをフルに活用することを提案する。
 今回、実験を行ったGHSハウスは、屋根および床パネルに熱交換パイプを配置し、冬期は屋根融雪や暖房の温熱源として、夏期は屋根面冷却や冷房の冷熱源として地中熱を利用することができる。
 測定結果から室内温度の鉛直分布はほぼ一様となり、快適な温熱環境を創出するとともに、省エネルギーを実現することがわかった。
 特に夏期の利用については地中熱利用の適用範囲を広げるとともに、屋根面を地中熱で冷却することで、都市のヒートアイランド現象の軽減にも活用できることを示唆した。

A3 建物解体工事における混合廃棄物の分別解体・回収の取り組み   都市基盤整備公団  森上 祥行
 都市公団では、1988年より集合住宅の建替事業に伴う建設廃棄物のリサイクルに取り組んできており、「建設リサイクル法」で再資源化等が義務づけられたコンクリート、アスファルトコンクリート、木材については、すでにほぼ100%のリサイクルを達成している。
 ゼロエミッションに向けたさらなる取り組みとして、これまで再資源化が困難であると考えられ埋立て・焼却処分等されていた混合廃棄物について、三鷹台団地(東京都三鷹市)においてモデル分別解体工事を実施した。
 当該モデル工事では、内装材のリサイクル品目を、石膏ボード、板ガラス、塩ビ管などの9品目に細分化し、分別解体・分別回収を実施した。
 その結果、従来最終処分されていた混合廃棄物について、約70%の再資源化を達成した。なお、全体コストは従来解体とほとんど同じであった。

A4 高温水広域ネットワーク普及のための「グリーン料金制度」の検討   鹿島建設(株)  金子 千秋
 本報告は、既存の港清掃工場(焼却能力900t/日)並びに新設の大井清掃工場(同600t/日)を排熱源とし、今後再開発が予定されている大崎周辺駅地区(建物延床面積70万u)への高温水広域ネットワーク(導管延長5.7km)について、民設民営で事業化するための創出と普及の支援について検討を行なうことを目的としている。
 その結果、卸熱会社の事業運営スキームは、グリーン料金制度を前提とした場合、グリーン料金の徴収方法とグリーンエネルギー証書の発行機関の組合せにより、4ケースが考えられる。
 「グリーン基金・制度」を導入した大崎地区卸熱会社の事業性につては、多くのケースにおいて借入金完済年度は20年を下回り、卸熱会社の民設民営化が可能であることがわかった。大崎地区卸熱会社の事業化方策の評価としては、「熱料金方式NPO・自治体証書発行型」が最も良く、「熱料金方式 企業証書発行型」が次に良いと考えられる。

A5 街区レベルの3次元波動音響解析 清水建設(株) 谷川将規
 都市域は多くの音源と多くの反射物・散乱物が存在する複雑な音場である。この複雑な音場を高精度に予測することは、効果的な騒音対策を行う上で最も基本的なかつ重要な課題である。
 しかし、従来の幾何音響解析では単純な解析条件に限られ、多重反射や回析現象を近似的に取り扱わざるを得ず、精度を確保できない場合が多かった。
 一方、本解析法は境界積分方程式法に基づく実用的な波動解析法であり、街区レベルの広範囲な解析領域に対して3次元解析が可能である。また、多重反射や回析現象などの波動現象を厳密に再現できる。
 本解析法は従来から騒音対策はもちろんのこと、建物配置計画や建物の形状デザインなどにも適用できる有効なツールとなると考えられる。本稿では、境界積分方程式法と独自の解析処理により定式化した3次元音場波動解析の概要と解析例を報告する。

A6 軽量緑化パネルの開発と適用事例   鹿島建設(株)  工藤 善
 近年,ヒートアイランド現象の改善意識の高まりから,都市部における緑化の重要性が認識されている。中でも屋上,屋根,壁面等の建築物の緑化が注目されており,東京都では屋上緑化が義務化され,大阪府,兵庫県,金沢市、仙台市などが施工費の助成を始めている。
 このような都市緑化需要の高まりに対し,屋上緑化システムの開発に取り組んできたが,さらに屋上や屋根を簡易に緑化でき,これまでは困難であった壁面の緑化にも対応できる軽量緑化パネルを開発した。本報では,研究開発の概要と成果品の特長や適用例について報告する。

A7 シミュレーションによる高層建築物周辺におけるビル風対策検討事例   大成建設(株)  金坂 利雄
 近年、高層及び低層建物を問わず建築物周辺のビル風による影響が問題視されている。
 その解決には影響の程度が容易に理解できる資料の提供や適切な対策を講じることが必要となり、経済的な側面からは短期間に低コストで影響を把握する予測技術が望まれる。
 この様な問題を解決するものとしては数値シミュレーションがあり、結果をビジュアルに表現できかつ3次元空間のあらゆる場所における予測結果についても多角的に検討できるツールである。特に、新たに計画される建物によるビル風の対策を行う場合には、周辺の市街地に複雑な気流の変化が生じるため、面的な予測結果が必要となり、その有効性が認識されてきている。
 本例では、超高層ビル周辺のビル風予測とその対策を、大成建設が1996年に開発し、運用しているビル風予測システムを用いて行い、ビル風予測における数値シミュレシミュレーションの有効性及び既往の実験か得られた防風効果について、実測を行い検証したので報告する。

A8 保水性コンクリートを活用したアーバンウェットランドシステム   鹿島建設(株)  柵瀬 信夫
 アスファルト、コンクリートによる都市空間の気温上昇は、両者の持つ水を排除する特性から起きている。それはかつてあった土の機能である。
 吸水、保水、蒸発散、毛管作用等が見すごされたことにある。
 本報告は、この見すごされた機能を備えた、称してウェットコンクリートを活用する鹿島のアーバンウェットランドシステム、湿潤した空間創造を実行する商品開発を紹介する。

A9 都市から排出される有機性廃棄物の循環システムの開発   大成建設(株)  寺島 和秀
 都市から主に排出される食品系の有機性廃棄物のうち、一般家庭や流通業,飲食店舗から排出される廃棄物は、その性状や集配経路などが複雑なことから、リサイクル率が低い。
 また、都市部においては、衛生面や臭いの問題で処理が難しいとされている。そこで、衛生的にかつ悪臭を低減して処理できるシステムで、農地還元の実績もある土壌改良材グリーンマイティを製造する装置を検討した。
 1次処理を都市部において行い、発酵を郊外で行うとして、小型機の開発を行った。
 製造されるグリーンマイティは、青森県,北海道等の様々な農家で、年間3000t以上の施用実績を誇っている。

A10 ウォークスルー耐火スクリーンの性能と適用事例   (株)大林組  村岡 宏
 これまで、常時開放型の防火区画あるいは防火・防煙区画には鋼製シャッターが多用されてきたが、鋼製シャッターは設計上のおさまり、動作安全性、避難安全性、延焼防止性において問題点が指摘されていた。
 これに替わる防火区画部材として、シリカ成分96%以上からなる耐熱ガラスクロスを素材としたウォークスルー耐火スクリーンの開発を行った。
 このスクリーンは通常、天井裏空間の鋼製ボックス内にロール状に巻き取られて収納されているが、火災時に煙感知器連動で降下して防火区画を形成する。
 また、スクリーンの任意の位置にスクリーンドアと呼ばれる避難口を設けることができる。スクリーンドアはL字型の切れ込みの下端部に蝶番等で可動する鋼製バーが取り付けられたもので、押すだけで簡単に開くため、健常者はもちろんのこと、車椅子利用者や高齢者、子供などの災害弱者も容易に避難できる。 本稿では、防火扉と防火シャッターの2つの機能を持ち、しかも、避難安全性、遮熱性、デザイン性に優れた次世代の防火設備であるウォークスルー耐火スクリーンの性能と適用事例について紹介する。

A11 新しい植栽基盤を用いた建物緑化とヒートアイランド対策   大成建設(株)  屋祢 下亮
 建物に負荷をかけない緑化システムとして、壁面緑化に対しては基盤取り付け工法や草炭マットによる軽量な植栽基盤を、屋上緑化に関して発泡スチロール廃材を活用した軽量の人工地盤パネルを開発し、新しい緑化工法の施工性や、壁面や屋上を緑化することによる建物の省エネやヒートアイランド現象に対する効果について検証した。

A12 植物廃材のユニット内発酵土壌化による緑のリサイクルと都市緑化   西松建設(株)  大道 将史
 公園・緑地管理業務や造成工事などで発生する植物発生廃棄物を緑化基盤材としてリサイクルし、これを用いたユニット植栽基盤に中低木を植樹する緑化工法を開発しました。 緑のリサイクルとして、伐採材・剪定材・刈草などを都市緑化に有効利用できます。
 また、緑化場所に設置したユニット基盤内で発酵処理を行うため、堆肥化施設の必要がありません。環境に優しく低コストの緑化技術です。
 ユニット基盤とは、廃材利用のヤシ繊維を管状に編み上げたチューブ内に「有機発酵土壌」(原材料:植物廃材チップ、堆肥化促進材、ヤシピート)を充填したものです。現地にユニットを配置した後、所定量の水を与えて養生(内部原料の発酵・土壌化)し、ユニット内で自然表土に近い土壌を生成します。養生中または養生終了後に苗木を植栽します。屋上緑化、法面緑化などに適しています。

A13 ガソリンスタンドにおける洗車用水のリサイクル   大成建設(株)  輿水 知
 ガソリンスタンドは、既存スタンドの廃統合、安値競争、多角化などにより従来のスタンドから人件費を抑えたセルフ式給油スタンドに変わりつつある。
 経営戦略もコンビニエンスストアや飲食店舗などを併設して集客と集金方法を変え、経費節減として、人件費だけでなく節水、節電の推進、イメージ効果を狙った環境への取り組み情報の開示など、経営基盤を築きつつ給油を通じて都市インフラ、市民生活への浸透を図ろうとしている。
 このような状況の中、固定収入が期待できる自動洗車システムの導入はセルフ式スタンドの目玉になりつつある。
 今回紹介する技術は、この自動洗車システムの洗車排水処理とその再利用について、新しく開発した電気分解式排水処理装置は、使用水量の80%のリサイクルを目指し、処理コストを抑え、自動運転化が可能で、設置スペースも小さく、自動洗車システムのバックアップとして期待される。

B.情報・交通
B1 東京駅周辺における情報化の状況について   三菱地所(株)  水口 雅晴
 東京駅を中心とする丸の内・大手町・有楽町に広がる「東京駅周辺地区」では、現在民間ビル群の建て替え等の「街の更新」が活発に進められている。
 「街の更新」を通じ、従来のオフィス業務機能に加え商業、物販・飲食、交流及び宿泊等の複合的な機能が立地し、多様な目的の来街者が急増しつつあり、以前にも増して来街者に「分かり易い街」「親切な街」となるための情報基盤の整備が急がれる。
 本稿では平成13〜14年度に東京駅周辺で行われた「3次元GISモデル実験」「歩行者ITS実証実験」を紹介し、行政と民間の協調による情報化の取組み状況について記述する。

B2 スクリーン及びPDAを用いた情報提供実験の効果と可能性   横浜市  山浦 善宏
 近年、インターネットの普及などITの進展はめざましいものがある。このようななか、横浜市においても、都市空間でどのような情報が来街者や歩行者の利便性・快適性の向上に役立ち、また求められているかを調査確認するため、平成14年3月に情報提供実験を実施し、情報提供による行動の変化などを検証した。
 調査の主な内容は、桜木町駅前広場街角スクリーン等により情報を提供し、市政モニター及び来街者にスクリーンの評価と効果についての意見聴取及び、GPSを活用したPDA(携帯情報端末)による歩行者ナビゲーションシステムをモニターに利用してもらい、その評価と効果についての意見聴取である。
 検証の結果、評価は概ね高く、効果においても、情報提供の有効性を確認することができた。今後は調査結果を踏まえ、さらに有効活用されるシステムを目指し改良を行い、情報提供による回遊行動の変化など効果を検証していきたい。

B3 バリアフリー化に対応した地下空間の交通結節点に関する研究   都市地下空間活用研究会  久保 寿
 地下空間が交通結節施設相互の連絡及び都市アクセスの交通路として重要な役割を果たしている日本の地下空間においては、複雑な所有形態、管理形態、整備時期の相違等に起因して、その接点において種々のバリアが顕在化している。
 今後の地下空間におけるバリアフリー化推進のための方策を検討するために、国内主要都市における地下空間内の「移動」に関する現状についてアンケートを実施し、これらのバリアの存在やその発生要因を明らかにした。

B4 広島市のインターネット等による都市計画情報提供システム   広島市  榎 智和
 本システムは、近年の急速な情報化の進展に対応し、市民に開かれた市役所を実現するため、インターネットを通し、地図情報(Web GIS)を含めた幅広い都市計画に関する情報の提供を行う、市民が利用しやすい行政情報システムを目指して整備したものである。  これにより、市民生活においては、市役所や区役所の窓口でなければ入手できなかった都市計画情報が、家庭や事業所などでいつでも入手可能となり、利用者のコスト軽減が図られるとともに、将来的には、まちづくりの基盤となる都市計画についての市民の関心の高まりや市民と行政が一体となったまちづくりの推進などが期待されている。  また、市役所内部においては、庁内LANにより市職員が各種都市計画の情報を共有・活用することにより、事務の高度化・効率化などが期待されている。
 本文では、このシステムの概要について紹介する。

B5 東葛地域における市民参加による道路整備計画の事例   中央復建コンサルタンツ(株)  永野 光三
 国道16号は、千葉県北西部の東葛地域で特に混雑が著しいため、交通の円滑化を目的として、平成13年度から市民参加(PI=Public Involvement)のもとで東葛地域の交通問題を共有するとともに、対策のあり方を議論することとなった。  この方式は、計画が固まってから事業化のために市民に理解を求めるものではなく、計画のあり方そのものを議論の対象とする、いわゆる計画段階でのPI方式である。
 本稿では、PI方式による千葉柏道路の計画検討プロセスに関して、「協議会の設置」「協議会の経緯」「今までの協議概要」「東葛方式の中間評価」及び「計画段階でのPI方式の今後の課題」を報告する。

B6 GISを用いた地震時道路被害想定モジュールの開発   (株)熊谷組  尾羽根 幸
 阪神大震災を契機として、地震被害の推定予測が各地で行われてきている。しかし、災害時のインフラ被害を基にした被災者救援について定量的な評価を行う取り組みは端緒についたばかりである。  本報文で紹介する「地震被災時交通運用支援システム」は、GIS(地理情報システム)上で構築しており、震度推定をもとに道路の被害予測や通行が困難になる箇所を推定するものである。  この推定をもとに通行可能な経路を探索し、目的地までの緊急輸送ルート・輸送時間・輸送可能量を算出するなど円滑な復旧計画の立案や被災者救援活動に役立てることを目的としている。

B7 都市再生における地震防災技術の応用   (株)大林組  副島 紀代
 都市再生プロジェクトにおいては、既存都市に潜在するリスクを特定・評価し、再生の過程でそのリスクが軽減されるような計画を行う必要がある。
 ここでは地震防災の観点から、当該地域における潜在的な地震災害に対するリスクを評価するための地震被害予測システムの活用について述べる。
 このシステムは、地下構造物を含む土木構造物の地震時被害をGIS(地理情報システム)を利用して一括評価するシステムである。
 地盤情報を与えることで地盤応答解析を行い、表層地盤の地震時挙動を把握することができるので、地下構造物の被害予測も行うことができる。そのため、ライフラインなど埋設構造物の多い都市インフラ施設の簡易耐震診断も一括して行うことができる。その結果、地震に対して脆弱な箇所を特定・認識することにより、適切な対策によって、より安全性の高い都市再生計画の策定に寄与することができる。

B8 渋谷スマートパーキング社会実験 〜カーナビによる駐車場案内・誘導〜   東京都  池田 珠樹
 東京都では、渋谷地区の交通の円滑化を目指し、平成13年度にインターネットを利用したカーナビによるドライバーの駐車場選択に関する嗜好条件(料金、距離、特約の有無など)に適した駐車場へ案内・誘導する社会実験を実施した。
 本実験により、システムの有効性が確認されるとともに、路上駐車、駐車場探索のためのうろつき交通が削減されるなど、交通の円滑化に寄与することが分かった。今後、実用化に向けた検討を進めていく。

B9 丸の内における交通・環境改善及び物流効率化のための実証実験   (株)エックス都市研究所  折原 清
 大手町・丸の内・有楽町地区は、我が国で最も古くに開発された我が国最大の業務集積地である。
 当該地区では、現在、国際ビジネス機能に加え商業集積を高める方向で街の機能更新が進められており、物流面では路上荷捌きによる不法駐車が増加し、ますます深刻な交通渋滞を引き起こすことが危惧される。駐車マネジメントと共同配送システムを軸とする本実証実験は、物流車両数及び環境負荷を削減させるだけでなく、共同配送システムの効果を検証することを目的に実施した。実証実験においては、地下荷捌き駐車場と共同配送拠点を用意して実施した。実験は、円滑に運用され、交通及び環境問題路等の改善効果が把握されたが、本システムの本格実施に向けては、費用負担原則の確立等の課題の解決が求められる。

B10 コミュニティバス導入に向けたバス交通計画の検討事例  (株)日建設計  矢澤 成尚
 川崎市において、バス交通は鉄道網を補完する地域の公共交通機関であり、高齢者や障害者等を含めた地域住民の日常的な交通手段として、きめ細かい対応を図ることが重要である。
 また、平成14年2月には「乗合バスの需給調整規制廃止(道路運送法改正)」が施行されたことから、今後、公共交通サービスの地域格差が生じる可能性も考えられ、これに対応した生活交通の確保方策についても重要な課題となっている。
 このような背景のもと、平成11年度からバスに関する調査を始め、平成12年度には関係局で構成する「バス交通に関する庁内検討会」を設置し、交通空白・不便地域の抽出や対応方策の検討を行ってきた。
 本稿においては、川崎市地図情報システム(GIS)を活用した新たな交通空白・不便地域の抽出方法を含め、コミュニティバス導入に向けたバス交通計画の検討経過を報告する。

B11 地方都市におけるデマンドバスの導入可能性の検討   三井共同建設コンサルタント(株)  鈴木 武
 本稿は、バス利用の低下が著しい兵庫県の地方都市2地区において、高齢者や通学者等の日常生活の「足」を確保するための方策として、デマンドバスの導入可能性について検討したものである。
 決った経路、バス停、運行ダイヤにとらわれず、利用者の要求(デマンド)に応じて運行ルートを変更するデマンドバスの先進的な事例を調査、研究し、対象地区についての地域現況や路線バス運行状況等を把握した上で、両地区の住民を中心としたバスを利用する可能性のある人たちを対象としたアンケート調査を実施することにより、現在の路線バスの利用状況ならびに利用しない理由、デマンドバスの利用意向等を把握した。
 その結果、デマンドバスに対する住民の期待度は高く、既存の路線バスと共存可能なデマンドバスの形態を提案した。ただし、採算性を検討した結果、本格導入に向けて赤字補填に対する自治体の課題などが明らかになった。

C.まちづくり(構想・システム)
C1 グランドデザインにおける都市の指標化技術の研究開発   清水建設(株)  沢田 英一
 低成長経済社会および成熟社会,超高齢社会に向けた都市の新しいグランドデザイン(中長期的で総括的な計画・構想)が必要とされている.
 グランドデザインは,そのイメージを共有するため,文章や絵で示されることが多いが,グランドデザインの最終目標やその進捗状況を示すための達成度を評価するためには,何らかの指標を提示することが重要である.
 本研究ではグランドデザインを策定するため,都市に関する統計情報を収集し,指標化を行った.その結果,都市は「経済の活性度」,「高密性」,および「ユニバーサル度」で指標化できることがわかった.
 さらに,各地域の因子得点を用いてクラスター分析を行った結果,4つのクラスターが生成され,地域の類型化が可能となった.

C2 密集市街地の地震被害発生マイクロシミュレータと防災施策の効果   東大大学院  宇治田 和
 大地震時の危険度が高い密集市街地でのまちづくりは,ポケットパークや建築物の建て替え,セットバックなど小規模な施策が多い.
 一方,現状の地震危険度評価や被害想定では,データおよび算定技術の精度や,評価結果の公開に伴う弊害などから,数百メートルメッシュ表示などおおまかな単位により評価・表現されるものが多く,被害軽減効果の分析は難しい.具体的にどの家屋の倒壊危険性が高いのか,街路のどこに建築物倒壊による閉塞危険性があるのかなどがわかるミクロなレベルでの評価方法が必要である.
 そこで本研究では,密集市街地における施策の被害軽減効果を分析し,有効な施策立案を究極的な目標として,地震災害時の地区の状況を,建築物・街路・住民ごとに多様な行動・状態も考慮してミクロな視点で表現できるシミュレータを開発した.
 そして,実際の木造密集市街地に適用し,人的・物的被害状況や防災施策の効果を分析した。

C3 診療圏分析システムにおける時間距離とシステム利用方法に関する考察   (株)熊谷組  熊谷 大作
 商圏分析や診療圏分析等のエリアマーケティング分野において、空間相互作用モデルを用いたモデル分析手法が使われている。
 診療圏分析システムの開発・運用を通し、空間相互作用モデルの距離設定、特に時間距離設定における課題の明確化、空間相互作用モデル適用によって求まる値の限界について考察し、診療圏分析システムの有効な活用方法について検討した。

C4 地域医療施設整備のための患者数予測システムの開発   清水建設(株)  高瀬 大樹
 医療施設の事業企画で最も基本となる利用者(患者)数を1km×1kmメッシュ単位で予測モデルを構築し、モデルの妥当性の検討を行った。
 施設ごとの利用者数予測には、1km×1kmメッシュ毎に人口の予測値と受療率とから、重力モデルを用いた。
 人口予測には、県別の仮定値(出生率,生残率,移動率)を用いたコーホート要因法を利用した。
 患者受療率は県別の傷病特性と9段階の年齢断面の傷病特性を考慮した診療科目別の受療率を発表データ(患者調査)から求める工夫をした。
 以上により、精度の高い患者数予測が可能になり、入院患者に関しては予測値が実績データとほぼ一致する結果が得られた。

C5 住民参加の川づくりから住民の主体的なまちづくりへ   福井県   坂田正宏
 福井市の中心部を流れる狐川(きつねがわ)において、モデル区間を設定し、平成12年度から住民、行政、生物専門家のワークショップにより川の自然復元事業を行ってきた。その過程を通じて、住民と行政との間にパートナーシップが築かれると共に、川の清掃活動などの住民の自主的行動も始まった。
 さらに、この状況を発展させ、流域全体の住民の主体的なまちづくりへの意識の向上と実践を行うために、地元主催による「狐川流域まちづくりフォーラム(仮称)」の開催と狐川の全域を対象とした「自然再生事業(補助事業)」の要望を住民と行政の協働で検討を始めたところである(平成14年10月現在)。

C6 地震火災に対する一般事業所の防災診断手法   清水建設(株)  村田 明子
 地震後の火災安全性について、設計図、目視調査やヒアリングにより予め定めたチェックシートによって事業所単位で評価する手法の概要を示す。対象用途は事務所、物販店舗、飲食店、ホテル・旅館、及びこれらの複合用途である。過去の被害事例や火災統計等をもとに抽出した評価項目は大分類(8)・中分類(23)・小分類(39)の3段階に階層化されており、大分類項目はA.出火防止、B.早期対応、C.初期拡大防止、D.延焼拡大防止、E.煙伝播防止、F.防火設備の機能維持、G.類焼防止、H.水損防止、で構成される。
 各用途のモデル建物、及び実建物を対象にケーススタディを行った結果、事務所・物販店舗は、出火危険性は低いが被害が拡大しやすい傾向があり、ホテルは出火危険性が高いが被害が小規模に留まる傾向がある等、用途毎の評価傾向が明らかになった。また、建物形態や設備の仕様に応じて評価されており、手法の実用性が確かめられた。

C7 『中心市街地活性化における今後の地下街のあり方(姿)の提案』―中間検討〜   都市地下空間活用研究会  西田 幸夫
 地下街は、快適な歩行者空間と賑わいの提供、周辺ビルとの接続による歩行者ネットワークの形成、地下駐車場の設置による交通混雑の緩和など、都市機能を支える重要な役割を果たしてきた。さらに、都市再生、中心市街地活性化や大深度地下空間利用にあたっても、地下街の果たすべき役割は重要と考えられる。
 このような背景から、平成11年度より、既存地下街の現状や課題を把握するため、地下街に係わる課題や要望などのヒアリング・アンケート調査を行ってきた。そこで得られた知見を下に、新たな地下街のあり方(姿)を提案するために、名古屋駅前既存地下街を題材に、既存地下街のリニューアルについて、空間計画・整備方策から、今後の地下街の新たな事業化の仕組や計画方法の提案、さらに広島紙屋町地下街シャレオを題材に、地下街の整備効果を把握するため活動を行っている。
 本論文は、検討内容と今後の方向性について言及する事を目的とした。

C8 地域環境評価システムの構築   大成建設(株)  高橋 一郎
 近年、地域開発を行なう際に環境と調和した開発であることが社会的に要求されるケースが増えている。
 すなわち、「都市再生」や「自然再生」などの構想に対して、地域の環境を読み取り、地域に適合した計画・設計が求められている。
 本システムはこのような背景の元で、環境共生という概念を地域レベルで実現するための「地域分析と開発の評価」を短時間に、より高精度に設定することを目的としている。
 国勢調査や各種数値情報をベースに、生活利便性やレクレーション度などの生活環境評価や、生態系の豊富さ・地域の水循環・地盤安定性などの自然環境評価をメッシュデータで整理し、総合評価を行ない、地域の持っているポテンシャルを生かした開発計画の策定を支援するシステムを構築したので、これを報告する。

C9 高岡駅周辺地区と新幹線新駅周辺地区が一体となったまちづくり   高岡市  藤田 晴久
 高岡市における北陸新幹線の計画ルートは、市域を東西方向に通過する計画(現在、認可申請中)となっているが、新幹線駅は、諸般の事情によりJR高岡駅の南側約1.5kmの分離駅で計画されている。
 本市中心市街地であるJR高岡駅周辺地区の活性化が急がれる中、北陸新幹線が分離駅で計画されていることから、高岡駅周辺地区と新幹線新駅周辺地区が一体となったまちづくりが望まれるものである。
 ここでは、高岡駅周辺から新幹線新駅周辺まで含めた地域を対象に、都市機能の配置方針や交通ネットワークの方針などを内容とした「都市整備ビジョン」、JR高岡駅周辺を対象にJR北陸本線を挟む南北市街地の一体化方策の方針を含み、これらを踏まえた高岡駅周辺及び駅直近部の整備方針を内容とした「基本計画」及び具体的な事業化に向けた施設整備計画を内容とする都市整備推進計画(中間報告)の概要について紹介するものである。

C10 地域環境資産を活用した龍ヶ岡5号近隣公園整備事業について   都市基盤整備公団  小園江 雅彦
 本稿は、茨城県龍ヶ崎市竜ヶ崎ニュータウンにおける龍ヶ岡5号近隣公園において、現況の急傾斜地崩壊危険箇所に指定されている高低差約20m、斜面傾斜約60〜80度以上(一部オーバーハング)の危険な崖地を、法面安定・緑化復元の造成を行うとともに、既存の豊かな緑や地形等の地域環境資産を最大限に活かし、また、16世紀頃に存在したとされる長峰城の痕跡を保全、歴史的風土を継承した公園整備として進めている公園事業の事例報告である。
 公園整備計画を策定する上では、現況の樹木の毎木調査を実施し、景観木・大径木等を保全した計画とし、斜面造成部の文化財調査で発生する表土は、法面客土材に、伐採樹木・竹林は、チップ化して、マルチング材、園路舗装材等に資源活用を図った資源循環活用型の公園整備計画としたものである。

C11 ヒートアイランドの緩和を目的とした建物排熱処理システムの提案   日本環境技研(株)  青笹 健
 大都市の中心部では、ヒートアイランド問題が深刻化している。例えば、東京・大手町では、過去100年間で夏期の気温が1.8℃上昇している。ヒートアイランドの要因の一つとして、建物からの冷房排熱が影響を与えていることが指摘されている。
 本研究は、建物からの冷房排熱によって引き起こされるヒートアイランド現象の緩和を目的とした建物排熱処理システムを提案するとともに、その社会的効用を評価する方法を提案することを目的とした。また、東京の丸の内、大手町、有楽町を対象として、システムを適用したケーススタディを行なったところ、長期的な観点から、当該システムの省エネルギーやCO2の削減効果は、建設コストと比べても有効であることが確認された。

C12 ビジネスセンター丸の内の再構築と丸の内ビルディングの役割 三菱地所(株) 恵良隆二
 ビジネスセンター丸の内の再構築は、地区の100年の歴史を踏まえ、情報化社会、グローバル経済に即応した新たなハード&ソフトのインフラストラクチャーの構築が必要となる。
 また、国際的な都市間競争の中、東京も市民に開かれた都心、多様な都市機能を有する活力ある都心形成が求められている。
 こうした状況を踏まえ、丸の内再構築の先導的プロジェクトとして丸の内ビルディングの建替えを行った。そこでは、高質な業務集積に加え、賑わい・交流機能がまち全体との関係の中で整備された。
 デザイン面では、地域景観の連続性や環境共生への取組みを重視した。また、ビジネス活動のインフラとして、IT環境の向上やコミュニケーション空間の確保といったハード面に加え、起業活動及び就業者の生活を支えるソフト環境づくり等の施策も開始した。様々な交流を生み出し、常に活力あるビジネス・文化を生み出すまちづくりに取組んでいる。

C13 みずの坂・やまて坂における協働・循環のまちづくりについて   都市基盤整備公団  高田 篤
 瀬戸市北西部の水野及び山手特定土地区画整理事業においては、官民のパートナーシップによる「協働・循環のまちづくり」に取り組んでおります。
 公共施設の設計段階から子どもたちの意見を取り入れ「協働」で作り上げる喜びを分かち合ったり、様々な価値観を持った地域住民が「協働」で活動する機会を提供したり、生ゴミのリサイクルとして家庭で発生した堆肥を花壇や菜園づくりへ活用し、食材として再利用する「循環」を提案する講座を開催するなど、公団の目指すモデル的街づくりとなりうる多様な試みを実施しています。

C.まちづくり(技術開発)
C14 シールド長距離施工技術の開発   五洋建設(株)  高橋 春夫
 本研究は、国土交通省等で実施している公共工事コスト縮減施策のなか、工事コストの縮減・工事の時間的コストの低減・工事中の安全対策等に対応する新技術として開発を進めた。
 本工法は、厳しい財政事情の下で推進する社会資本整備に欠かす事のできないシールド工事において、シールド機のカッタービットを摩耗や土質の変化に対応して、迅速かつ安全にまた何回でもサメの歯が生え替わるように交換できる工法であり、コストの縮減・工程の短縮・安全性の向上を実現して長距離施工や大深度施工に大きく貢献するものである。

C15 新しい内面平滑型セグメントを用いたシールド工法   鹿島建設(株)  古市 耕輔
 近年,都市部のインフラ整備は,地上の高度利用により地下に展開しており,またその施工にあたっては地上の利用状態により非開削工法によるところが多くなってきている。
 このときにか欠かせない施工方法が非開削でトンネルが構築できるシールド工法である。このシールド工法においても,昨今の社会情勢から,建設コストの縮減が求められており,そのための手段として,二次覆工省略,覆工の薄型化によるトンネル断面の縮小,立坑基数削減に伴うトンネルの長距離化,高速施工化,自動化,省力化などあげられている。
 また,シールドトンネルの使用用途も従来の鉄道,配管洞道だけでなく,地下河川や道路など多岐にわたるようになり,そのためにシールドの覆工セグメントに必要な機能も多角化してきている。
 そこでこれらの各ニーズに対応するセグメントを考案したので,その開発プロセスとその適用実績について述べる。

C16 充填式シールド急曲線工法の開発と施工   西松建設(株)  磯 陽夫
 シールド急曲線区間では,シールドの回転を容易にするため余掘りを行う。
 この余掘りによる地山の緩みを防止するため,従来,シールド掘進周辺部の地盤改良を目的として,主に地上部から薬液注入工が行われている。
 地上での作業は,作業帯設置による交通障害や施工に伴う騒音等により周辺環境への影響が課題となっている。そこで,地上での作業を必要とせず,かつシールドの掘進に影響を与えない工法を開発した。
 本工法は,硬化せず小礫の沈降を抑止する性状を有する充填材を,シールド機周辺およびテールボイド部に掘進と同時に注入することで地山の緩みを防止する。
 また,袋付きセグメントを使用し,セグメントリングの安定性を確保し,かつシールド推力を地山に伝達することにより所定の線形を確保するものである。本稿では,工法の概要及び施工結果について報告する。

C17 工期短縮、交通負荷低減を目指す新工法?マルチシャフトシールド工法   大成建設(株)  小林 昌巳
 建設工事の低コスト化・工期短縮については社会資本整備上の必須課題となっているが、都市部において、シールド工事は都市部であるが故に作業基地の用地不足、工事車両の通行制限を受け、工期の短縮化が困難な状況である。
 マルチシャフトシールド工法は、複数箇所からの土砂搬出により土砂処理設備の分散化を行うものである。併せて複数箇所からの土砂処理設備に伴い、送泥、排泥ポンプを制御するシステムを構築するものである。
 本工法により、土砂搬出、資材の搬出入、土砂処理(泥水処理)を分散することでそれぞれの設備の効率化、1日あたりの土砂搬出量の増加による工期短縮、工事車両分散による環境負荷低減が期待できる。

C18 交差部立体化の超急速施工法「TQB工法」   大成建設(株)  西田 泰夫
 交通の流れをスムーズにするための立体交差工事が、実際は長期にわたって渋滞を増幅する結果となっている例は少なくない。
 この矛盾を解決するべく身近な土木技術を応用し新たに開花させたのがTQB工法である。
 景観や交通規制条件等様々な課題の優先順位に合わせ、プレキャストブロックとPC一体化施工により工期、コストを最小とするB(Block)工法に加え、R工法、K工法の3工法を開発。

C19 自己昇降システムを用いた立体交差事業の急速化施工   鹿島建設(株)  桝本恵太
 交通量の多い都市部では、交差点あるいは踏切において、朝夕だけでなく日常的に交通渋滞が生じ、市民生活の不便、物流の遅延、さらには緊急車両の通行の妨げなど交通渋滞による人的損失はもちろん経済的損失は計り知れない。
 在来工法で立体交差事業を実施する場合には、広範囲の通行止めと最低でも1〜2年の工事期間が必要となり、長期間の更なる渋滞と周辺環境・住民の方々へ悪影響を及ぼしてきた。
 これらの問題に対し、交通規制・通行止めを最小限にでき、かつ短期間に施工できる交差点及び踏切の立体交差工法の開発が望まれている。
 さらに、様々な地盤条件で種々の基礎工法も含めて短期間で施工できる方法が要求されている。
 ここでは、これらの問題を解決することを目的に開発を行った“自己昇降システムを用いた立体交差事業の急速化施工法”(以下、SEB(Self Elevating Bridge)工法)を紹介する。

C20 立体交差工事の二次渋滞回避を狙った急速施工法「すいすいMOP」の開発   戸田建設(株)  浅野 均
 都市部の交差点や踏切では、ボトルネックと呼ばれる慢性的な渋滞ポイントが存在する。
 解決施策としては、立体交差化の有効性が早くから指摘されてはいたものの、通常1年〜2年と言われる工事期間の短縮が重要な課題となっていた。
 「すいすいMOP工法」(Module On Pier)は、この課題を解決するとともに、工事中に発生する二次渋滞を解消するという新たな視点から開発したものである。
 本工法では、幅員25mの4車線道路に2車線の高架道路を施工する場合、従来工法では困難であった交差点部での右折車線確保を、施工時占用領域をコンパクト化することで実現した。
 また、従来工法並みの工費で、現地工期を約4.5ヶ月に短縮することにも成功した。
 本稿では、「すいすいMOP工法」の概要とその特徴について紹介する。

C21 短工期で施工できる柱の耐震補強工法の開発   鉄建建設(株)  市川 昌和
 既存鉄筋コンクリート造建築物の柱を対象として、短工期で耐震補強ができ、粉塵、臭気および騒音等の発生を極力抑えられる工法を意図して、打込型枠と炭素繊維シートを用いた耐震補強工法の開発を行った。
 不燃性を有する厚さ13mmの打込型枠を工場でコ形に成型し、その内面に予め炭素繊維シートを貼り付け、継手部のみを未含浸として、1ピースの補強材とする。
 現場では、補強対象柱の両側からコ形型枠を建て込んだ後、継手部のみ炭素繊維シートを接着する。
 既存柱とコ形型枠の隙間30mmにはグラウトを充填して一体化させる。本工法の開発にあたり、その性能を確認するために、中心圧縮実験および水平加力実験を実施した。
 本報告では、打込型枠と炭素繊維シートを用いた柱の耐震補強工法の概要および性能確認実験について述べている。

C22 中低層集合住宅を対象とした免震地盤システムの開発   鹿島建設(株)  赤対 清吾郎
 災害に対し安全な人工の大地「免震地盤」を街区全体に展開し、その上部を従来の土地と同じ様に増改築・建替えを可能とすることで、将来に渡り多様化する社会ニーズに応え、地震など大災害に強い長寿命な都市基盤を構築する技術開発。
  本論文では、その概要とケーススタディについて報告する。

C23 解体・再利用を考えた有期限鉄骨工法の実験的な検討   西松建設(株)  飯塚 信一
 近年においては、情報の高度利用化、ニーズの多様化に対応すべく、仮設シアターやショッピングセンター、テナント商業ビル等のなかには、当初から使用期間を短く限定した鉄骨建築物が建設されている。
 これらの目的を持った建築物では、実際には、一般の建築物のような構造・耐力上のスペックは必要とせず、その要求される使用期間、機能、性能等に応じて、コストを含めて再利用を考慮した最適な技術・工法が求められている。
  このような社会のニーズに応えるため、当社では、齋藤建築事務所と共同で短期間での解体・再利用建物の可能性を検討してきた結果、有期限建築物を対象とした、地球に優しい、省資源・省エネルギータイプの「有期限鉄骨工法」を開発した。
  本報では、工法の特徴および実大模型による柱、フレーム実験からの検証結果について報告する。

C24 部分固化方式による軟弱地盤対策工法   鹿島建設(株)  山田 岳峰
 軟弱地盤の沈下・支持力対策、地震時の液状化対策として、部分固化方式による軟弱地盤対策工法を開発した。
 本工法では、高品質な地盤改良施工技術を採用するとともに、改良体の性能を評価できるNoーtensionFEM解析に基づいた改良体と地盤の複合構造の設計照査法を導入しており、部分固化方式の設計担保と改良率低減によるコスト縮減を可能としている。
  当該工法は1999年以降横浜みなとみらい21中央地区において、2002年3月末時点で改良土量約16万mの施工が実施されており、全体固化にくらべ、工事費で最大20%程度の縮減と、工期を約1/4に短縮している。

C25 地中連続壁掘削精度管理システム   西松建設(株)  小栗 利夫
 地中連続壁掘削精度管理システムは、深度150m級の地中連続壁掘削工事に対応でき、高精度かつ効率的な掘削管理を目的として開発したシステムである。
 掘削溝に設置した位置検出装置(精度管理架台)により掘削機の位置および姿勢を検知し、その情報をリアルタイムでオペレータに表示することで、より高精度の掘削管理を行うことができる。
 掘削機の位置および姿勢検知の原理は、精度管理架台と掘削機頭部の滑車との間にワイヤを張り、そのワイヤの長さと傾斜角により掘削機の水平変位量を算出する方式である。
 掘削精度管理システムは、掘削機の位置および姿勢を計測する精度管理架台、計測データの演算処理およびオペレータへの情報提供をするベースマシンシステム、データ管理を行う管理室システムから構成されている。