A.環境・エネルギー
A1 愛知万博における新エネルギーシステムとエネルギー制御システム   (株)エヌ・ティ・ティファシリティーズ  角田 二郎
 地球環境保護の観点からCO2 排出削減は今日の地球規模の課題として認識される一方で、燃料電池や太陽光発電等の新エネルギーは、電力や熱などのエネルギーを高効率に供給・利用する分散型エネルギーシステムとして機能することが期待されています。そこで、2005 年日本国際博覧会会場を舞台に「新エネルギー等地域集中実証研究」 として、独立行政法人新エネルギー・ 産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の委託研究を受け9事業者が共同で燃料電池や太陽光発電などの新エネルギーを用いた大規模なマイクログリッドの実証研究を行ないました。本稿では実証研究の概要とエネルギー制御システムの役割について説明します。

A2 分散ネットワーク熱利用による新しい都市空調システムのビジョン   鹿島建設(株)  日野 俊之
 建物間を繋ぐ直埋設の配管ネットワークを都市インフラとして構築し、地中熱のみならず各種施設の排熱を集放熱源に利用する新しい分散型ヒートポンプシステムのビジョンを提示する。  ヒートポンプを氷蓄熱と組み合わせ、さらに水と自然冷媒の直接接触方式で製氷すれば、地球環境への完全に適合した省エネルギー効果の高い技術が可能になる。そして、土壌の大きな蓄熱能力によってヒートアイランド現象も緩和するため、都市に相応しい次世代の空調システムが実現する。

A3 京都エコエネルギープロジェクトの概要とバイオガス発電の役割   (株)大林組  小川 幸正
 本実証研究「新エネルギー等地域集中実証研究」は独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)による委託事業であり,変動電源である太陽光発電及び風力発電とその他の新エネルギー等を適正に組合せ,これらを制御するシステムを作ることにより,実証研究地域内で安定した電力・熱供給を行うと同時に連系する電力系統へ極力影響を与えず,かつコスト的にも適正な「新エネルギーによる分散型エネルギー供給システム」を構築し,供給電力等の品質,コスト,その他のデータを収集・分析を実施する。本実証研究の一つが,「京都エコエネルギープロジェクト(KEEP)」であり,一般電気事業者の電力網を介して電気の供給を実施するプロジェクトである。実証試験地区は,京都府北部の丹後半島に位置する京丹後市である。本報告は、本プロジェクトの概要を紹介し、バイオガス発電施設に関してその役割等を述べる。

A4 複合密集市街地更新における分散型エネルギーシステムの導入に関する研究   (株)岩村アトリエ  吉澤 伸記
 分散型エネルギーシステムは、オンサイト型の電熱併給システムとして省エネルギー効果等が期待され、これまで主に業務・商業用途の大規模建築の集積地区におけるエネルギー供給合理化手法として検討されてきた。本研究では、住宅を含むより多様な建築用途や、エネルギー需要が集積する日本の典型的な複合密集市街地(三軒茶屋地区)を対象に、分散型エネルギーシステムの導入とそのネットワーク化による効果を検証した。検討に際し、対策前後と現在の各ケースについて、三軒茶屋地区全体の一次エネルギー消費量の変動と、分散型エネルギーシステムからの排熱による市街地への影響についてシミュレーションを実施し、具体的効果を調査した。併せて市街地における重要課題であるエネルギー供給の安全性やアメニティ増進等に対する有効性について検証した。

A5 市部でも適用可能な短工期の油汚染土バイオ処理   (株)大林組  石川 洋二
 都心部におけるガソリンスタンドや工場において往々にして発見される油汚染土について、迅速で、環境に負荷のかからず、処理土が植栽緑化可能な、低廉の浄化処理方法を開発した。特殊資材による発酵熱を利用した新たなバイオ処理技術であり、従来より短い工期の、冬季など低温期でも施工可能で、臭気の飛散防止など周辺環境対策も備えた浄化方法である。掘削した油汚染土に適用することを目的に、現地実証試験にて実証した。掘削した油汚染土に特殊な資材を添加し、敷地内に畝(うね)状に細長く積んでおくだけで、汚染土の中の微生物が活性化し、油分分解を促進することが可能となった。バイオ処理期間中の浄化効率を最大にするために、特殊資材添加量、通気空気量を調節することにより、土中の温度をバイオ処理に最適な温度に保ち、従来浄化効率の低かった冬季においても施工が可能となった。

A6 横引き式遮水シートによる地下遮水壁構築工法の開発   清水建設(株)  河田 雅也
 横引き式遮水シートによる地下遮水壁構築工法(ラテナビウォール工法)は、トレンチャー式地盤改良機で攪拌混合して造成したソイルセメント壁にロール状に巻いた遮水シートを挿入し、巻きほぐしながら横引きして地下遮水壁を構築する工法であり、廃棄物処分場などにおける中浅深度の地下遮水壁工事などに適用が期待される。従来の遮水壁工法は継手部が0.4〜2.0m間隔で発生するため煩雑な継手作業を頻繁に行う必要があり、施工機械も大型であるが、本工法は、(1)継手の数を減らすことによる工期短縮・工費削減、(2)バックホウ程度の軽便なベースマシンを用いることによる機動性の向上、(3)継手の数を減らすことによる遮水性能の向上、が特徴として挙げられる。本論文では、工法概要を説明し、平成17年4月に実施された公開実験について紹介する。

A7 計画立案の早い段階から環境に配慮した道路計画の策定   東京都  近藤 琢哉
 東京都では、計画立案の早い段階から情報を公開し、計画をより環境に配慮したものに調整していくため、平成14年の東京都環境影響評価条例改正により、計画段階環境影響評価制度を導入した。
 条例化に際しては、玉川上水が流れている都市計画道路放射第5号線の未整備区間を対象に、総合環境アセスメント制度(現:計画段階環境影響評価制度)の試行を行った。当該手続では、採用可能な複数の計画案について、環境に及ぼす影響を比較・評価した「環境配慮書」の提出(平成12年)などの手続を進めた。
 平成13年には、都民の意見等を踏まえ、玉川上水などの地域の環境に配慮した基本計画を決定した。引き続き、事業段階環境影響評価及び都市計画変更の手続を進め、平成16年に「環境影響評価書」の提出及び都市計画変更の告示を行った。

A8 ソーラー給水装置を付加した保水性舗装システムの開発   大成建設(株)  内池 智広
 ヒートアイランドは近年の都市環境において大きな問題となっており、その対策技術の一つとして保水性舗装が注目されている。一方で、保水性舗装は保水された水分が失われると温度低減効果が薄れる為、効果の持続性が課題とされている。
 そこで、太陽光や雨水などの自然エネルギーを利用し、水分蒸発の要因である日射負荷に応じて 給水量を調整する給水装置を保水性舗装と組み合わせたシステムを開発し効果の持続性の確保を計った。試験施工を実施してシステムの稼動状況及び効果の持続性を測定により確認し、給水量が日射負荷に追従して調節されていること、保水性舗装の温度低減効果の持続性が確保されていることを確認した。

A9 特殊膜濾過による高度な膜式濁水処理システム   清水建設(株)  澁谷 啓司
 自然環境を守る上で、建設工事において発生する濁水(SS)を適切に処理して排水することは、大変重要なことである。
 特殊な芯材を濾布で包み込んだ板状の膜濾過ユニットを、複数濾過槽内に垂直に懸垂し、ユニットの内外に水頭差をつけ、濾布の表面で浮遊物質を捕捉する膜式濁水処理方法である。膜濾過のため、有機性高分子凝集剤を必要とせず、また垂直濾布面の通過速度を遅くすることで、捕捉した濁質を膜の表面に強固に付着させず、付着濁質自身でも濾過効果を促進するようにしている。それにより、従来の凝集沈殿処理と砂濾過処理を組合せた処理方法に代わり、単独で、高濃度濁水(SS1,000〜3,000mg/L)をSS10mg/L以下まで直接清澄濾過ができる。

A10 食品廃棄物リサイクル施設におけるメタン発酵と土壌改良資材生産の状況   鹿島建設(株)  北島 洋二
 本施設は、高温メタン発酵によるバイオガス化施設の発酵液を剪定枝・刈草の堆肥化助剤として有効利用し,発酵廃液処理設備への負荷軽減を図ると同時に,土壌改良資材として堆肥やマルチング資材の生産を行っている。本施設は2003年4月に稼動を始めて以来2年以上安定して運用されており,平均日処理量12.7t/日の生ゴミなど食品廃棄物から,月間平均で最大211 Nm3/t-ゴミのバイオガス生産を達成している。生じた発酵液のうち,約3割の6t/日を散布することで,3,400t/日に剪定枝・刈草と茶粕、コーヒー滓を加えた約4,000t/年の廃棄物から,2,000t/年の土壌改良資材が生産され,そのほぼ全てが有効利用されている。

A11 建設発生土を利用したランドスケープデザイン   (株)大林組  杉本 英夫
 建設発生土は、リサイクル法の趣旨に基づき、より一層の有効利用が望まれている。緑地は、人工的な都市にあって、人間に安らぎとうるおいを提供する貴重な空間である。両者を結びつける技術は、都市再生や新しい都市のインフラ整備には欠かせない。建設発生土には、軽微な改良で利用できるものと特殊な改良が必要なものがある。そこでは、物理・化学性の分析に基づいて、迅速・的確に土性を判定し、適切な改良技術を選択して緑化利用を進めるシステムが要求される。緑地には、気候・風土・生態系回復のミチゲーションなど周辺環境に配慮したランドスケープ計画が望まれる。建設発生土には、塩成土壌、セメント排泥など利用困難な物があるが、独自開発技術を駆使して、リサイクル促進と緑地の創出に努めている。

B.情報・交通
B1 愛川線スイスイ作戦(渋滞緩和に向けて)   相模原市  中澤 昇
 相模原市では、平成13年度に「TDM基本計画」を策定し、平成15年度から、本計画に基づき、現在、道路渋滞による環境問題、バスの定時性の確保や歩行者の安全問題等が課題となっている「県道54号相模原・愛川」(通称:愛川線)において、地域特性を踏まえた実現性の高いTDM施策を推進するため、市民参加による「TDMワークショップ」を開催するとともに、平成16年度には、学識経験者、道路管理者、警察、事業者等の専門家からなる「TDM推進委員会」を設置し、「TDMワークショップ」と連携を図りながら、愛川線の渋滞緩和等を目指し、TDM施策の推進や導入に向けた社会実験の実施など、市民、企業、行政が協働した取組みを展開している。

B2 身体障害者・高齢者を対象とした都市内における交通情報提供システムの提言   東京海洋大学大学院  神谷 潤
 我が国では身体障害者や高齢者等の交通弱者に対する交通環境の改善が問題となっており、平成12年度に施行された交通バリアフリー法に基づき、交通弱者を含むすべての人が利用しやすい交通環境の整備が進められつつある。しかし、道路や鉄道施設の改善などのハード面に対するバリアフリー化は行われているが、交通情報やまち情報などのソフト面に関するバリアフリー化は進んでいないのが現状である。
 本研究では身体障害者・高齢者に対するソフト面のバリアフリー化の具体的対策として、既存の「まち情報提供システム」、「駐車場案内システム」及び「歩行経路案内システム」を組み合わせた身体障害者対応の「都市内交通情報提供システム」の提案を行うことを目的としている。

B3 都市における大画面ディスプレイを用いた双方向メディアの可能性   (株)竹中工務店  原川 健一
 大画面ディスプレイが急速に進歩してきており、これらが空間の壁要素として用いられてくると予想される。これらはインタラクティブに使用されてこそ価値が出てくると思われる。
 そのような、ポインティング技術として街頭で使用することに適した特性と、人のいろいろな操作姿勢にも追随できる性能を有したハンドポインティングシステムを紹介した。
 操作には、若干の練習が必要であるが、子供でも容易に操作できることを実証している。
 このような双方向性の有るディスプレイの街頭での利用法として、双方向広告、行政広告、タウン情報提供、モバイル・キオスク連携を提案し、その他での利用法としてITS 的利用、衛生管理的利用、アミューズメントへの応用を提案した。
 最後に、ステレオカメラに携帯用小型カメラを用い、ステレオ処理部、ポインティング処理部をチップ化して統合化した、空間で動かす手を認識する低コストのマウス(空間マウス)を提案している。

B4 福岡市都心部における駐輪特性と総合的な自転車対策について   福岡市校  松岡 淳
 内閣府調査において放置自転車数が全国ワースト1となった福岡市都心部の天神地区では,都市機能の集積を反映し,多様な自転車利用形態が想定される.また,放置自転車問題に対し,駐輪場の整備と放置自転車の撤去といった画一的な自転車対策を行うのではなく,自転車の利用特性を体系的に把握し,各々の特性に応じた対策を講じることが,より効果的であると考えられる。
 そこで,本論文では,自転車駐輪者へのヒアリング調査等から福岡市都心部における駐輪特性を分析するとともに,それらを踏まえた様々な自転車対策の取り組みとその効果についてまとめたものである。

B5 新しい交通システム「IMTS」   トヨタ自動車(株)  青木 啓二
 自動運転バスをベースとした新しい都市型の交通システム「IMTS」を開発し、愛知万博の会場内の基幹交通システムとして実用化した。
 本システムは軌道に設置された磁気マーカを用いた磁気誘導システムで、複数の車両が機械連結を用いず自動で隊列を組みながら走行する。又自動運転を手動運転に変更し、一般道をバスとして走行できるデュアルモード機能を持つ等、これまでの交通システムにはない新しい機能を有する。愛知万博では先進デザインの車両が最大3台隊列で自動運転されるとともに、最後尾車が自動分岐し、手動運転モードで一般道を走行する。IMTSの技術的特長及び万博での運行システムについて述べる。

B6 東京都市圏における物資流動調査のねらいと物流の実態   国土交通省関東地方整備局  田宮 佳代子
 東京都市圏交通計画協議会(国土交通省関東地方整備局、東京都市圏の1都4県4政令市、都市再生機構、日本道路公団、首都高速道路公団で構成。平成17年9月現在。)では、東京都市圏における総合的な都市交通計画の推進のため、「物」の動きの観点から、平成15〜16年度に「第4回東京都市圏物資流動調査」を実施した。
 第4回調査では、過去3回の調査を抜本的に見直し、実態調査を実施した。本稿では、第4回調査のねらいと調査内容を紹介するとともに、同調査で把握された「東京都市圏における物流の実態」の中から、物流施設に関する最近の傾向(物流のアウトソーシング化、立地の郊外化、賃貸化、高機能化(流通加工機能など)等)を報告する。

B7 多摩ニュータウンにおける交通社会実験について(予約型乗合タクシー)    (独)都市再生機構  木瀬 晴也
 多摩ニュータウンの初期入居団地では、今後急速な高齢化が進むことが予測されている。また、地形的な起伏に起因して、丘の上の住棟から路線バスが走る谷部の幹線道路までの段差が大きく、高齢者などの外出・移動の制約要因となっている。
 このため、高齢化社会にふさわしい快適で利便性の高い都市型DRT(需要応答型公共交通システム)として、タクシー車両を活用した予約制乗合方式(バスより便利でタクシーより安い)により、敷地内通路を住棟近くまで送迎し、多摩センターまで往復する定時型の交通システムの導入実験を、3ヶ月強にわたり運行した。
 利用者は会員制とし、利用状況等のデータや、アンケート・ヒアリングによる意見や評価を分 析し、今後の具体化に向けた課題と方向性を得た。

B8 東京都における踏切対策の基本方針について   東京都  鴇田 正明
 東京都では、これまで連続立体交差事業をはじめとした各種の踏切対策を着実に実施してきたものの、都内には依然として約1,200箇所の踏切が残されている。連続立体交差事業は踏切解消やまちづくりの推進などの面で非常に効果が高いものの、多くの費用と時間を要する事業であることから、今後はより計画的・効果的に実施していくとともに、その他の対策も併せて総合的に踏切対策を実施する必要がある。  このため本論文においては、東京都が平成16年6月に策定した「踏切対策基本方針」についての内容を紹介するとともに、平成17年3月に東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近において発生した踏切事故の対策として、緊急的に実施された踏切対策についての内容を紹介する。

B9  P&R促進を目的とした駅前駐車場の利用に関する実態調査と促進方策の検討   群馬工業高等専門学校  嶋田 利光
 群馬県は移動分担率の自動車が占める割合が全国でも有数の高い水準にあり、県の環境基本計画の中でもCO2やNoxなどの削減が重要な課題のひとつとなっている。このような状況の中、県はステーション整備事業などによりP&R推進を目的に駅前駐車場の整備を進めてきたが、利用者の実態や意識など必ずしも充分に把握されていない。そこで本研究では、県内に設置されている駅前駐車場について、利用者の実態や意識を把握するとともに、調査結果に基づいた今後の促進方策について検討する。

B10 秦野駅北口周辺地区における一方通行社会実験について   秦野市  杉田 佳一
 秦野駅北口周辺地区は、本市の中心市街地として発展してきましたが、狭隘道路が多いことに加え、商業の衰退などが進行し、加えて水無川両岸道路を中心とする朝・夕の渋滞の恒常化など「みち」と「まち」の再整備による活性化が課題となっています。交通問題については、既成市街地であることから、既存の道路空間を有効活用した交通円滑化手法が模索され国や大学の研究室により交通シミュレーションを活用した調査・研究が行われました。その結果、水無川両岸道路の一方通行化により交通の流れを整えることで、渋滞緩和に一定の効果や道路空間の再配分に方向性を示すことができました。そこで、まちづくりと交通改善施策の相乗効果を調査するため社会実験を実施しました。本論文は、その概要をまとめたものです。

B11 近年のJR東日本における西山手方面輸送改善   JR東日本(株)  山田 徹
 JR東日本が2004年10月16日に実施したダイヤ改正では、東海道・横須賀線方面と宇都宮・高崎線方面との相互直通サービスを提供する「湘南新宿ライン」の大増発が行われ、利便性の向上と埼京線の混雑緩和が図られた。本稿は「湘南新宿ライン」の強化を中心とした、西山手方面輸送についての近年の状況と今後の改善計画を述べるものである。

C.まちづくり
C1 ヒートアイランド解析評価システムT-Heatsの開発   大成建設(株)  大黒 雅之
 ヒートアイランド対策とされている要素技術や、建物配置、植栽等、屋外の暑熱緩和に欠かせない項目について、総合的に取り扱える3次元CFDによるヒートアイランド対策検討ツールを開発しました。本報告では、開発したツールの概要と建物の立替プロジェクトを想定した解析例を紹介しています。このようなヒートアイランド対策を施した建築物の計画を進めていくことにより、個々の敷地の暑熱緩和はもちろんのこと、都市全体のヒートアイランド現象の大幅な改善が期待できると考えられます。

C2 壁面緑化の現状および緑化景観の評価構造の把握   (株)竹中工務店  佐久間 護
 壁面緑化の普及の実態、つまりその狙いや手法を把握するためのアンケート調査を行うと共に、感性工学的アプローチであるデザイン評価手法を用いて、緑化景観の評価構造を把握するためのヒアリング調査を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。
 壁面緑化の狙いでは、緑化された施設外観やデザイン性が重視され、緑化手法は簡易な2種類の手法で80%以上を占め、適用植物もツタ植物で70%以上であることが明らかとなった。また、壁面緑化に対する一般の人々の評価基準には、植物から受ける印象のほかに、人間の関与の程度や建物および周辺との関係が含まれ、植物が生き生きとしていてボリュームが適度であることや、自然さと計画性のバランスがとれていることが重要であることなどが明らかとなった。

C3 超大断面道路トンネル分岐合流部非開削築造技術の開発   清水建設(株)  浜口 幸一
 大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が施行され、現在、地下40mを超える深さの道路事業が計画されている。しかし、道路トンネルでは、当然、交差する幹線道路との接続が必要となり、地上とのアプローチが課題となる。そこで、都市域の大深度未固結地盤を非開削で、断面が500m2を超える道路トンネル複数車線同士の分岐合流部構築を目指して開発を進めた。
 開発した工法は、実用的で、確立された技術を持つシールド工法を核とし、小断面シールドによる高剛性な先受工と、限定的な凍結工法との組み合わせによるアーチ効果、止水を期待した構造体で分岐・合流部を囲み、その内部を切り下げ、施工する工法である。この工法は、確実に、経済的かつ工期の要求にも応える道路トンネル分岐合流部の施工法である。

C4 橋梁アセットマネジメント導入における劣化予測に向けた調査点検データの統計学的抽出方法の研究について
   福岡市  宮本 能久
 福岡市では、高度成長期やイベント等を通じて急速に橋梁を整備した結果、今後施設の老朽化が進み、何の対策も施さなければ、近い将来一斉に更新時期を迎え、その対策に莫大な予算が必要になることが予想される。しかしながら、財政状況が厳しいことと少子高齢化の進展による福祉関連予算が増大する社会情勢等を考慮すると、今後、施設の維持管理に十分な予算を確保することは難しい。そのため、施設を計画的に点検・補修し、トータルコストを縮減する手法(アセットマネジメント)を導入し、災害に強い安全なまちづくりを実現していくことは極めて重要である。本論文は、橋梁の計画的な点検・補修に必要不可欠となる施設の将来劣化予測に向けた、信頼性のある調査点検データの統計学的抽出方法について研究したものである。

C5 PFI手法を活用した資源循環工場の整備について   (株)日建設計  林 邦能
 埼玉県が全国ではじめての都市計画決定を伴う産業廃棄物処理施設としてPFI手法により推進する「彩の国資源循環工場」の整備の背景や事業内容、環境アセスメント等について紹介する。
 廃棄物処理施設整備にPFI手法を導入することで、循環型社会の形成に向けた官民の協働がより積極的に実現することができ、最先端技術の導入、周辺環境への配慮もなされることになる。
 同様に環境アセスメント手続きにおいても官民それぞれの役割を分担することにより、住民との合意形成に寄与することができる。
 これらを整理し、今後の類似事業の推進に当たって参考となる資料の提供を行う。

C6 都市NATMに適した超長尺先受け工法の開発   清水建設(株)  西村 晋一
 都市部での土被りが小さいNATMトンネル工事では、補助工法として長尺先受け工の採用が考えられる。従来の先受け工は削孔中の方向制御を行わないため、30mを超える施工では精度の低下が危惧された。そこで、削孔中にボーリング先端の位置を高精度に計測し、さらに50m級の長さの施工においても方向制御機能を有する長尺先受け工法を開発した。
 同工法では従来工法に比べ、先受け工の工期20%の短縮とコスト10%の削減、さらには地表面沈下量の約20%の低減を実現できる。このほど、模擬土丹層を長さ50mまで削孔する実験を行い、本技術の高精度制御削孔を確認した。

C7 環境に優しい効率的な新たな道路維持管理への取り組みについて〜青森県橋梁アセットマネジメントシステムの導入〜
   青森県  浅利 洋信
 我が国では、高度成長期に大量の道路構造物が建設されており、近い将来、これらの補修や更新が急激に増大する大更新時代を迎えることとなる。一方で、厳しい財政状況のなか予算の削減が続いており、より効率的な維持管理が求められている。このような状況の中で、安全安心な生活を確保するために必要な道路ネットワークを維持していくためには、アセットマネジメントを導入した効率的な橋梁の維持管理が不可欠である。
 本論文はシステム構築により、既設橋梁を最大限利用するように長寿命化を図ることで、新設材料の削減など、地球環境に与える負荷を最小限にすることを目的に取り組んだ橋梁アセットマネジメント構築への課題や解決策、試算結果、それを踏まえた新たな道路管理の方法を提案します。

C8 水幕を用いた新しい火災防災システム   鹿島建設(株)  天野 玲子
 大深度地下利用法の施行や都市再生の進展に伴い、地下空間やトンネル空間で発生した火災に対する火災防災技術が必要となっている。
 そのため、水幕式火災防災システムを開発した。水幕式火災防災システムは、水の幕(ウォータースクリーン; 以下WS)を用いて火災が発生したゾーンを区画化することで、被災者の避難安全性を向上させることを目的としたシステムである。WSは、区画化する線上に放水ヘッドを配置し、粒径約200μm の霧状の水を放水することで水の幕を形成する技術である。
 このWSの火災時の区画化効果を把握するために、道路トンネルを対象とした火災実験を実施した。その内容及び結果について示し、道路トンネルへの適用例について示す。

C9 短繊維樹脂コンクリートを用いた耐火セグメントの開発   清水建設(株)  林 裕悟
 現在、都市域での道路シールドトンネルの耐火構造が注目されている。従来の耐火構造は、二次覆工コンクリートや耐火被覆材を用いセグメントを別の材料で内面保護するものであった。しかし、これらの耐火構造は、施工性・経済性・工期などの面で難があり、昨今の工事に対する要求を必ずしも満足する状況になかった。
 そこで、セグメント本体に耐火性能を持たせるべく、RCセグメントに使用される配合をベースとして、短繊維樹脂(ポリプロプレンおよびポリアセタールなど)を混入する〔耐火セグメント〕の開発に着手した。
 実際の荷重状態を模して各種加熱実験を行った結果、〔耐火セグメント〕の耐火性能、補修方法の有効性が確認できた。
 今回は、この開発結果を発表する。

C10 地下水流動保全対策として採用した水中躯体移動設置工法の施工   東京都  島田 剛
 近年、都市土木工事において、大規模な山留め壁を用いた開削工法により環状構造物を構築する際、山留め壁が地下水の流動を阻害する地下ダム化現象を引き起こし、周辺地域の地下水位差を生じさせ、地盤沈下をはじめとする周辺環境への影響悪化が問題化している。
 環状第8号線南田中トンネルでは、従来の対策工法と異なった発想により、海洋土木技術である沈埋工法の原理を陸上で適用し、現状の通水槽を乱すことなく地下水流動保全対策が可能となる「水中躯体移動設置工法」を開発し施工している。本発表論文は、対策工の考え方と水中躯体移動設置工法の施工手順及びその効果についてのべるものである。

C11 コンバージョン住宅における居住設備・性能・賃料の重要度分析   清水建設(株)  沢田 英一
 本研究では,コンバージョン住宅を対象として,居住設備や性能と賃料の重要度を,コンジョイント分析を用いて明らかにすることを目的とした。東京都区部居住者を対象としてアンケート調査を行い,501名より回答を得た。重要度分析の結果,単独世帯は3つのグループ,核家族世帯は5つのグループを形成することがわかった.単独世帯においては,回答者の46%が賃料を最も重要視するグループに属していた。一方,核家族世帯においては,全体の45%が床の遮音性を最も重視するグループに属していた。さらに,コンジョイント分析の結果から,居住者に好まれるコンバージョン住宅の仕様をグループごとに明らかにした。

C12 大学、民間企業等が参加した「駅圏活性化プログラム」策定調査   ブロードバンド東京21研究会  折原 清
 取手市では、中心市街地の商業活性化等のソフト施策と駅周辺地区における市街地整備が一体となった事業の展開を試みようとしている。しかしながら、駅周辺地区における市街地整備後の建築物の立地誘導施策や、都市間交流拠点の建設・運営手法等については、隘路に立たされている状況にある。そこで、取手市に立地している東京藝術大学や民間企業及び市民、さらには、ブロードバンド東京21研究会等の知識とノウハウを集結し、新しいまちなか活性化戦略のツールとして「ブロードバンド」を位置づけ、ブロードバンド・インフラの構築と活用の方向、さらには、まちなか活性化方策としての「アーバン・マネジメント」の必要性と展開方向を整備プログラム及び方策を含めて具体的に提示した。

C13 「周辺区部における土地区画整理事業を施行すべき区域」における新たなまちづくりについて   東京都  市原 道男
 東京の周辺区部には、昭和40年〜44年にかけて旧都市計画法により都市計画決定された「土地区画整理事業を施行すべき区域」が存在している。このエリアは、面積が約9,000haと膨大であり、早期の事業化が困難であった。このため、東京都では、平成14年3月に「周辺区部における土地区画整理事業を施行すべき区域の市街地整備のためのガイドライン」を策定し、全国で初めて、土地区画整理事業の長期未着手区域における今後のまちづくり推進の手引きを示し、都市計画の見直しを行った。本稿では、これまでの経緯とガイドラインの内容、また、ガイドラインに基づいて都市計画を変更して新たなまちづくりを行った事例を紹介する。合わせて、今後の課題と対応策(案)について私見を述べる。

C14 将来の浜松都心交通の整備方針について   浜松市  永田 光夫
 浜松市は、昭和60年度に中心市街地の交通の整流化及び中心市街地の活性化のため、中心市街地交通管理計画(ゾーンシステム)を策定した。その後、その計画に基づき、道路整備を行い、平成10年度にトランジットモールの社会実験を実施した。しかし、地元商店会などから反発が大きく、これ以上計画が進められないこじれた状態になってしまった。このこじれた状態を解消するため、浜松市は市民参加のオープンサロンやワークショップを行い、市民と行政相互の考え方を共有していく活動を行った。その結果、平成16年度に、市民より「将来の浜松都心交通の整備方針」として、新たな整備計画案が提案されたところである。

C15 兵庫らしい道路景観創出ガイドラインの作成   (株)日建設計シビル  犬塚 紀和
 兵庫県では、県が行う「美しい県土づくり」の一環として、道路事業における兵庫らしい良好な道路景観を創出するための指針となるガイドラインを策定した。作成にあたっては、専門的な視点から指導・助言を得るため、学識経験者等で構成する検討会を設置するとともに、道路景観の課題の抽出と地域住民の道路景観に対する意識を調査するために、地域住民の参画による道路景観評価とワークショップの試行を行った。
 ガイドラインでは、兵庫らしい道路景観創出の基本理念・基本方針を示し、それに基づく景観創出の考え方について多くの事例をもとに整理している。さらに、実現方策として住民の参画と協働による道路景観創出の進め方を整理するとともに、道路景観にかかる地域マスタープランの策定や景観関係法・条例等との連携、景観創出を持続的に取り組むためのシステムづくりについて示している。

C16 小学生・地元住民たちとつくる梅美台公園   (独)都市再生機構  赤井 重行
 梅美台公園は小学生の意見を取り入れ設計した公園です。園内にはビオトープや棚田、現況林を残した生活山(里山林)があり、子供たちは総合学習の時間を利用し様々な体験をしています。また、子供たちをサポートする「公園づくり応援団」も活躍しています。

C17 住民参加型「松阪市交通バリアフリー基本構想」について   (株)オオバ  大宮 正浩
 近年、社会資本整備において「ノーマライゼーションの理念」の実践が求められるようになり、あらゆる人が等しく社会参加できる生活環境を提供することが重要な課題となっている。
 平成12 年1 月に『高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律』(交通バリアフリー法)が施行された。
 同法では、地域の重点的・一体的なバリアフリー化の推進は、市町村主導で実施するものとされている。
 本稿では、松阪市が、公共交通事業者、道路管理者、地域住民等とともに合意形成を積み重ねながら策定した交通バリアフリー基本構想について紹介する。

C18 変わり続ける丸の内の象徴「 東京ビル建て替え計画」   三菱地所(株)  谷澤 淳一
 三菱地所では「世界で最もインタラクションが活発な街」を目指し、丸の内再構築を進めています。東京ビルは丸ビル以降4番目のビルとなります。最大の特徴は公民協調による「新たな街づくり制度」の活用です。容積移転・育成用途の集約化・街並形成型総合設計制度など、あらたな制度を活用しています。
 また、東京駅の南ゲートに位置し、仲通りとは異なる東京駅と有楽町駅とを結ぶ新たな回遊軸が加わることになり、街の回遊性は一層高まります。低層部ではこれまでになかった夜のシーンも創出する等、東京ビルの竣工により丸の内はますます変わります。

C19 三宮駅周辺でのターミナル機能拡充を中心としたまちづくり   神戸市  林 泰三
 神戸の玄関口である三宮駅周辺は、商業、業務、文化施設等が集積するとともに、JR、阪急阪神、市営地下鉄、ポートライナー等の複数の交通機関が集まるターミナルである。
 来年2月の神戸空港開港を控え、市民をはじめ、初めて神戸を訪れる方々にとっても、各交通機関の乗り換えがより一層便利にできるとともに、駅周辺を安全で快適に回遊できるよう、三宮駅周辺の交通結節機能の強化を図っていく必要がある。
 「国際観光都市神戸」の顔として三宮駅周辺が、より質の高い総合ターミナルとしての機能を発揮するとともに、ユニバーサルデザインに配慮した「ユニバーサルなまち神戸」の実現に向けて、現在、三宮駅周辺で取り組む、歩行者動線の3層ネットワーク拡充整備、神戸新聞会館の再建に伴う複合的な空間利用、都市鉄道利便増進事業に基づく阪神三宮駅の改良について紹介する。

C20 八重洲・日本橋地区における空間の再編・活用方策に関する研究   都市地下空間活用研究会  大村 敏
 八重洲、日本橋周辺地域は、都市再生緊急整備地域(東京駅・有楽町駅周辺地域)に指定され、老朽化し景観上の問題を抱える首都高速道路の再整備、空港アクセスの強化の一環としての都営浅草線の東京駅接着等、交通施設の整備と一体となったまちづくり計画が複数構想されている。これらは、地下空間を再整備・活用する大規模な都市再生の取り組みとなることから、まちづくり、建設技術等多様な観点から、実現に向けたあり方を検討し、「ストリート文化の再生」と「グランドセントラル機能の創出」の提案に向けて、地下から考えるまちづくりを基本として、地上を潤すための地下利用について、また、実現化のために、関係者等に対して広く本提案に対する理解と協力を求めることを目的とする。